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「経理公開」社長の給料も丸見え 経営参加意識高める中央会計の“荒技”

ニュースカテゴリ:企業の経営

「経理公開」社長の給料も丸見え 経営参加意識高める中央会計の“荒技”

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プレゼン大会では、社員の知恵をしぼったユニークなアイデアが出される(中央会計提供)  サラリーマンにとって最大の関心事は毎月の給料。同僚や先輩がいくらもらっているかわからないのが普通だが、税理士法人の中央会計(大阪市中央区)は、社長の給料を含めた自社の経理を社内ですべて公開している。経理をさらけ出すことで、社員に経営感覚や会社を成長させる気概を身につけさせる狙いだ。営業アイデアの審査を、役員ではなく中間層の社員に担当させるなど、社員全員に経営参加を促す。社員の意識改革は過当競争が続く税理士業界で生き残るための“原動力”になっている。

 社長の給料もお見通し

 「税理士は、企業の社長と直に付き合う仕事。社長の気持ちを理解するには、経営者感覚を身につけなければなりません」

 中央会計で、役員に次ぐ中間層にあたる“マネジャー”を務める稲見益輔さん(30)は、こう語る。

 社員が入社後最初に担当する業務は自社の経理。売上高、交際費、交通費、人件費など、会社が何にいくら使っているのかは一目瞭然。会計は全社員が閲覧でき、社長や役員の給料まで“丸見え”だ。

 ただし、自分の給料も他の社員に知られているのだ。普通のサラリーマン感覚からすると、他人に見られるのは気分がいいものではない…はずだが、稲見さんは「上司や先輩の給料を見て、自分も仕事を頑張れば、これだけもらえるようになるんだという具合に、モチベーションの向上につながっている」と語る。

 会計のプロは人目を恥ずかしがるより、実効性を重視するようだ。

 アイデア審査は中間層

 小松宣郷社長(35)をはじめ、同社は20、30代の若手中心だが、「トップが営業手法を考えるのではなく、全員で会社を成長させようという方針」(稲見さん)で、中間層が経営に参加する。

 代表例は、半期ごとに顧客サービスのアイデアを社内で募って審査する「アイデア報奨制度」。審査するのは役員ではなく、稲見さんら5人のマネジャーだ。

 審査員1人あたり20ポイントの持ち点があり、審査したアイデアにポイントを与える。発案者の社員は獲得ポイント数に応じて報奨金をもらう仕組みだ。1ポイントにつき5千円で、審査員全員から満点(計100ポイント)をもらうと50万円。うまくいけば年100万円の特別ボーナスだ。

 なぜマネジャーが審査するのか。その理由は「現場と役員の双方の考えがわかる立場で、本当に役に立つアイデアを選べるから」と稲見さん。

 半年間に寄せられるアイデアは20件程度。領収書の整理方法を教える業務では、電話より手間がかからずわかりやすいとして、動画にまとめて提供するアイデアがあがった。審査の結果、報奨金が支給され、実際の営業現場で採用されている。

 プレゼンは全員投票

 中間層以外の社員も、経営にかかわっている。月に1回、「企業の業務効率化」「マーケティング」といったテーマを設定し、4チームに分かれてアイデアを競わせる「プレゼン大会」は、役員審査ではなく、社員全員による投票で選ぶ。

 優秀なアイデアへのご褒美は高級ホテルでの豪華な食事。「ランチか、ディナーかは、プレゼンの内容を見て、役員が決める」(稲見さん)といい、役員の“判断”が介入するのは料理のレベルというわけだ。

 社員のモチベーション向上の効果は、業績にも反映されている様子。飽和状態で過当競争が続く税理士業界で、同社の顧客数は平成16年の182社から現在は約630社に増加している。

 強力なリーダーシップを発揮するカリスマ経営者もいいが、風通しがよく、会社全体のやる気が高まる職場環境も、企業の“元気の素”であることは間違いない。(宇野貴文)

◇会社データ◇     

本 社=大阪市中央区備後町3-6-2

設 立=平成4年

資本金=6500万円 

売上高=4億円(平成24年12月期連結)

従業員=25人

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