日本企業関連のM&A(合併・買収)助言業務の獲得競争が激しさを増している。2013年に日本が関わったM&A総額を基にした助言業務の実績ランキング(リーグテーブル)の首位は、国内証券最大手の野村ホールディングス(HD)を上回り、日米金融大手の合弁、三菱UFJモルガン・スタンレー証券が初めて獲得した。日本企業の国際化を進める戦略として、「時間を買う」M&Aのニーズは14年も高まるのは確実。巻き返しを期す野村と、外資、メガバンクとの戦いは、日本経済の再生にも寄与しそうだ。
金融情報会社トムソン・ロイターによると、三菱モルガンが13年に関わった案件の買収総額は、2位の米投資銀行のゴールドマン・サックスに1兆円以上の差を付け首位。前年首位のみずほフィナンシャルグループは6位で、11年まで5年連続首位だった野村は3位だった。
三菱モルガンの躍進は、国境をまたぐ大型買収を多く手がけたことが要因だ。今年最大の案件となった半導体製造装置で世界3位の東京エレクトロンと首位の米アプライドマテリアルズの経営統合や、住宅設備国内最大手LIXIL(リクシル)グループ傘下のリクシルによる独グローエの買収などで助言業務を獲得したことが寄与した。
三菱モルガンは10年5月、メガバンクの三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)と、米金融大手モルガン・スタンレーが共同出資して設立された。
三菱UFJFGの狙いは、傘下の国内証券業務を統合し、投資銀行業務を強化すること。助言業務を突破口にM&Aに使う資金の一部を傘下の銀行がつなぎ融資するなど、グループのネットワークを生かしたさまざまな波及効果への期待もあった。
三菱モルガンの別所賢作M&Aアドバイザリー・グループ統括責任者は「国内の三菱UFJのネットワークと、海外のモルガン・スタンレーの知見を生かした相互作用が功を奏している」と述べた。
14年のリーグテーブルは、地力に優る野村、三菱モルガンにメガバンクや外資系が挑む構図となりそうだ。
野村は、13年の国内企業同士の大型案件は「ほぼ全勝」(同社)だったものの、海外企業が絡む案件で苦戦した。東京エレクトロンの経営統合案件では、1980年の新規株式上場(IPO)で主幹事だった有利な立場を生かせなかった。
ただ、地力が落ちているわけではない。金融調査会社ディールロジックが推計した13年の日本企業関連の助言業務手数料収入では、野村が首位だった。
野村は、米大手投資銀行グループのリーマン・ブラザーズ(08年9月に倒産)の欧州部門を買収しており、M&A部門では「グローバルレベルの情報収集力や提案力が向上している」(野村証券の角田慎介企業情報部長)。さらに、担当する人員の強化を継続し、体制強化を急いでいる。
2位のゴールドマン・サックスは、13年に米アプライドやグローエの助言業務を務めたほか、オリックスによるロベコ買収でオリックスの助言業務を獲得するなど、大型の案件を相次いで手中に収め、「海外に本拠地を置く金融機関は相対的に有利」(市場関係者)となる。また、前年の12位から順位を上げた5位の三井住友フィナンシャルグループは、09年に傘下入りしたSMBC日興証券との連携を強め、存在感を増している。
足元では、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」による急激な円安が進んでいるが、日本企業のM&Aへの意欲はむしろ高まる。日本の人口減少で、「内需縮小は不可避という強い危機感を持つ企業が海外企業買収に成長の可能性を見いだしている」(大手証券)からだ。
円安が定着しても、M&Aの増加傾向は当面続くとの見方が市場には強い。野村証券などによると、10年以降の年間M&A総額のうち、日本企業が海外企業を買うケースは30~50%程度で推移、「M&A全体を押し上げている」(市場関係者)。
一方、政府は成長戦略の一環として、20年までに対内直接投資残高を現在の2倍の35兆円に増やす目標を掲げる。外国勢が国内企業への投資を増やせば、雇用の拡大などが期待できる。M&A助言業務をめぐる競争激化は、14年の日本経済に活力をもたらしそうだ。(佐藤裕介)