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日本企業は出る幕なし…トホホ サムスンもアップルも真っ青、シャオミ急成長
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“中国のスティーブ・ジョブズ”との異名を持ち、起業をめざす中国の若者たちがカリスマ視するシャオミの雷軍(レイ・ジュン)最高経営責任者(CEO)。シャオミはサムスンもアップルも抜き去る勢いで成長を遂げている…(AP) さて、今週ご紹介するエンターテインメントは、今、世界で一番勢いのあるエンタメにも大いに関係する企業のお話です。
ところで、みなさんは今、世界で最も勢いのある企業といえば、どんな企業を思い浮かべますか?。アップルやグーグルといった米のインターネット関連企業でしょうか? それとも、「アナ雪」の大成功と大型買収の連発で世界のエンタメ業界で1人勝ちを続けるディズニー映画を傘下にもつ米ウォルト・ディズニー・カンパニーでしょうか?。
残念ながら、どれもはずれです。欧米メディアが今、世界で一番勢いのある企業として驚きとともにその動向を伝えているのが、中国のモバイル端末メーカー、小米科技(シャオミ、Xiaomi)なのです。
日本ではあまり馴染みのない企業名なので意外に思った方も多いと思いますが、このシャオミ、昨年、創業からわずか4年で韓国のサムスン電子、米アップルに次ぐ世界第3位のスマートフォン(高機能携帯電話)メーカーの地位を獲得。
その昨年の売上高は、何と前年の2・4倍(135%増)の743億元(約1兆4400億円)! さらにスマホの販売台数も3・3倍(227%増)の6112万台と驚異的な伸びを記録し、世界の産業界を瞠目(どうもく)させました。
そのうえ、これからは、12億5200万人の人口を有する大国、インドへの本格進出を狙いつつ、スマホに加え、家電やテレビの生産販売、そしてネットテレビのコンテンツ制作にまで乗り出すというのです。いやはや恐るべし。今週は、そんなシャオミについて、ご紹介いたします。
シャオミは2010年4月、中国の北京で設立されました。共同設立者として会社を立ち上げたのは、雷軍(Lei Jun=レイ・ジュン)現最高経営責任者(CEO、45歳)。以前の本コラムでご紹介した中国の電子商取引最大手アリババの創業者兼会長のジャック・マー氏(50)とともに、中国のネット企業というか、中国経済躍進のアイコン(象徴)と言われていますが、とりわけ雷軍氏の経営者としての才能はユニークです。
1969年12月、中国の湖北省に生まれた雷軍氏は、名門、武漢大学で工学の学士を取得。92年に中国最大のコンピューターソフトの開発販売会社「金山軟件(きんざんなんけん=キングソフト)」のエンジニアとして入社し、98年には早くも社長に。
2000年には書籍のネット通販会社Joyo.com(ジョヨドットコム)を立ち上げ。これを2004年にネット通販世界最大手の米アマゾンドットコムに7500万ドル(約88億3000万円)で売却します。
しかし07年、健康上の理由から、キングソフトの社長兼CEOを辞任。その後、複数のネット企業に投資し、その中の1社の会長に納まったあと、10年4月、シャオミを設立。破竹の快進撃が始まりますが、その方法が極めてユニークなのです。
まず、雷軍氏がめざしたのは、アップルを創業し、音楽産業の構造を大転換させた楽曲の有料ネット配信サービス「iTunes(アイチューンズ)」やスマホの先駆け「iPhone(アイフォーン)」を世に送り出した伝説的な経営者、故・スティーヴ・ジョブズ氏でした。
そこで雷軍氏は、メディアに登場する際も黒いシャツにジーンズとジョブズ氏そっくりの服装で登場。製品発表会見でもその服装で、トークの間合いや壇上での立ち居振る舞いに至るまで、ジョブズ氏を徹底的に模倣しました。
そして経営哲学も、他人の模倣はせず、徹底した効率主義&業界慣習の“逆張り”というジョブズ氏の精神を忠実に踏襲しました。例えば、自社のスマホは11年に「Mi1(小米手機)」を発売して以来、基本、年間1機種しか販売せず、おまけに販売は携帯キャリアからではなくネット販売のみ。
さらに広告費は1円も使わず、交流サイト(SNS)といったネットでの口コミのみに頼るマーケティング戦略を展開。社名にちなみ「米粉」というファンクラブを中国全土に設立し、常に会員から自社製品への要望や改善案などを募集。それを新機種に反映させるという徹底した“顧客至上主義”を貫きます。
こうした徹底合理化策でコストを削減するので、スマホの方はサムスンやアップルと何ら遜色のない高性能ながら、価格の方は何とほぼ半額に。実際、14年7月発表の「Mi4(小米手機4)」だと、5インチ液晶画面やソニー製の1300万画素のカメラを備えているのに、価格は1台1999元(約3万8000円)とアイフォーンの半額以下とあって、中国の若者が競い合うように買い求めました。
その結果、米調査会社IDCによると、シャオミはまず中国のスマホ市場で13年に米アップルを抜いてシェア3位(11%)に。さらに昨年(14年)には韓国サムスン電子を抜いて1位(14%)になりました。
世界市場のシェアでも昨年7~9月期は前年の同じ期と比べて3・2ポイントも伸ばし、サムスン(23.8%)、アップル(12.0%)に次ぐ第3位(5・3%)に。サムスンは1位を維持したものの、前年より8・7ポイントも落としており、これは明らかにシャオミの大攻勢でシェアを喰われてしまった影響と言われています。
勢いに乗り、14年12月には、シンガポール政府投資公社(GIC)などの投資家から11億ドル(約1300億円)を調達。企業価値は460億ドル(約5兆4000億円)と評価されました。
雷軍氏は1月4日、前述した昨年の驚異的な経営数字を中国のマイクロブログ「微博(ウェイボ)」で披露するとともに「2014年はシャオミにとって重要な節目の年となった。われわれは後発だが、中国のマーケットリーダーになった」と誇らしげに書き込みました。
しかし雷軍氏の野望はもっと大きいのです。まず1月15日に本国で、スマホとタブレットの中間サイズの端末「ファブレット」の新機種2種類を発表したのですが、商品名は「Mi Note(ノート)」と、その上位機種の「Mi Note pro」。サムスンのタブレットとアイフォーン6を意識しまくっているのが分かります。
そしてこのMi Note、アイフォーン6プラスより厚さが0・15ミリ薄い6・95ミリ、重さは11グラム軽い161グラムで、アイフォーンより薄型・軽量化を実現したうえ、アイフォーン6とプラスで見られたカメラ部分の出っ張りも見事に消えています。そのうえ価格は2299元(約4万3000円)と競合他社の同レベルの商品に比べてかなりの低価格を実現しています。サムスンもアップルも真っ青。実際、雷軍氏が登場した発表会見ではサムスンもアップルもMi Noteの引き立て役。つまりは小馬鹿にされていたのです。
これだけではありません。シャオミの国際事業本部のヒューゴ・バラ副社長は1月16日付ロイター通信に対し、ネットテレビ向けのコンテンツ開発に10億ドル(約1180億円)を投資するほか、テレビを含む自社家電の生産販売に乗り出す考えを表明。今後、海外のメディアやコンテンツに積極投資(平たく言えば買収ですね)していくと訴えました。
自社で買収した海外メディアにネットコンテンツ(番組など)を企画・製作させ、それを自社のスマホやタブレットやネットテレビに流すわけです。ソフトとハードを両方押さえれば無敵ですからね。
実に壮大な計画ですが、創業からわずか4年で世界第3位のスマホメーカーになったいまのペースで成長を続ければ、不可能ではないでしょう。実際、多くの欧米メディアも、昨今のサムスンの不調ぶりなどを鑑(かんが)みれば、5年~10年後にはシャオミがサムスンもアップルも抜き去り、スマホの世界シェア1位になるだろうと予想しています。それにしても、この分野で日本企業は出る幕なしですな。トホホ。(岡田敏一)