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NTTファシリティーズ、研究員自ら“実験台” オフィスビルの省エネ新技術
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新しい省エネ技術の実証・実験を行うNTTファシリティーズのイノベーションセンター(東京都江東区)
NTTグループの設計・エンジニアリング会社、NTTファシリティーズが昨夏に稼働を始めた研究開発拠点「イノベーションセンター」(東京都江東区)。隅田川沿いに建つ地上4階地下1階、延べ4300平方メートルのビルには、太陽光パネルや地中熱を活用した空調装置などの環境配慮型設備に加え、光や温度、湿度などを計測する千数百個のセンサーが設置されている。
刻々と集まる膨大なデータをどう活用し、エネルギー消費の効率化につながるサービスを商用化していくか。ここで働く約100人の社員が自ら“実験台”となり、日々アイデアの実証に取り組んでいる。
同社はグループ各社などのビル1万8000棟の管理やデータセンターの構築・運用などを請け負い、全国260カ所にサービス拠点をもつ。高機能ビルの建築設計では大手町フィナンシャルシティノースタワー(同千代田区)やグランフロント大阪(大阪市北区)などを手がけた。
イノベーションセンターには、こうした事業で長年培ってきたノウハウと新機軸が凝縮。その一つが、昨年12月にアイリスオーヤマなどと組んで提供を開始した照明管理システム「FIT LC」。窓から入る光の明るさや人がいる場所をセンサーで感知し、照明装置ごとにきめ細かく自動調光することが可能で、消費電力を7~8割削減できる。
同システムでは、照明装置に接続する電力ケーブルと制御ケーブルのうち後者を無線で置き換えている。このため施工にかかる労務コストが約40%低減でき、オフィスを模様替えする際の改修費用も不要だ。また従業員がスマートフォンを使って自分の頭上の照明だけを点灯したり、ビルの入退室管理システムと連携させてオン・オフする使い方も可能だ。
「既存の照明設備への外付けにも対応できる。オフィスの消費電力のうち約20%を占める照明の省エネ効果は大きい」とR&Dストラテジー部門の担当課長の中里秀明氏はアピールする。
商用化に向けて期待がかかるのは、サーバールームの「片寄せ技術」。稼働状況をモニタリングし、夜間など全体の負荷が下がったとき、半分のサーバーに処理を集中させ、もう半分を停止する。停止させることで空調も不要となり、節電効果が大きい。同センターで実際に運用しながら、支障なく処理を切り替えるタイミングなどを研究している。
空調システムにも新機軸を導入。センサーで室内外の温度・湿度を測り、屋外が快適な気温なら、窓の近くで働く従業員のスマホに自動で通知。窓を開けるとシステムが検知し、エアコンが自動で停止する仕組みになっている。
オフィスの一角では、照明やディスプレーなどの機器に380ボルトと高電圧の直流給電を利用している。交流と直流の変換時に生じる電力ロスの削減が狙いだ。
さらにビル内には3~10メートルに一つの割合で位置ビーコンを設置、社員の動きをリアルタイムでモニタリング。集まるデータをビッグデータ解析し、今後の省エネ技術に役立つ知見を得たいという。こうした新技術に結びつく一人一人の発想を融合させるため同センターの研究フロアには仕切りが設けられていない。
「寿命の長い建物は時代ごとに使われ方が変化していく。その時々に応じた新しいビル管理サービスを開発、提供していきたい」と渡辺剛主任研究員は話す。NTTグループの新ビジネスを開拓する戦略拠点として、同センターが担う役割は大きい。(山沢義徳)