ニュースカテゴリ:暮らし
仕事・キャリア
ネット時代の時間感覚 市場コンテクストの理解を深める
更新
鈴木喜千也さん 地域による時間感覚の差というと、「5分の遅刻に寛容か?」といった例が出やすい。だが季節感も時間の感覚の一つである。
「桜が咲くとかもちろんありますけど、風邪をひきやすい、食あたりがおこりやすい、と気をつける項目が変わるのも季節感ですよね。これらも地域のコンクストを理解するにあたり鍵になると思います」
市場調査などを行う会社、ベルウッドを経営する鈴木喜千也さんは、こう語る。季節感によって選択する服が違えばウェアラブルコンピューターを装着するところも変わってくるはずだ。だから欧州、北米、アジアなど海外市場調査を多く手がけている鈴木さんは、電子デバイスの開発においても季節感を丁寧に追うことは必要と強調する。
さて、インターネットの普及により多くの習慣が変わってきたが、それに伴い変わるがゆっくり変わりつつある感覚と、あっという間に変わるものがある。もちろん変わらない感覚もある。市場のコンテクストを理解するには、これらを層別することが肝心だ。
ここで鈴木さんは3つの感覚をフォローすることが重要ではないかと考えている。3つとは「時間(季節)」「金銭」「場所」である。仲間と共通した意識をもてる線引きや枠組みが地域や時代によって違うが、上記3つが指標になりやすい。
ブレイクダウンすると「時間=季節、週や月、1日の時間」「金銭=単位、両替、貸し借り、支払タイミング」「場所=地元の土地勘、活動範囲、道、国、州、県の境」ということになる。
ここでは時間を取り上げてみよう。
「江戸時代の旧暦は、大小の月が今のように2、4、6、9、11月と決まってなかったので、月末に集金する商家にとっては、今月が大の月か小の月かが重要でした。だから大小暦という絵暦(カレンダー)を家に貼っていて、ここから浮世絵が発達したと言われています。また、この頃は曜日の概念がありませんでしたから週の概念も無かったのです」と江戸文化に詳しい鈴木さん。
明治時代以前は時間も今のように「5分の遅刻も許さない」ということはなかった。だいたい「一刻を争う」の一刻とは30分のことだった。
また「昼の時間」と「夜の時間」に意味があった。当然ながら明かりがあるかないかに生活が大きく左右されたからだ。菜種油を買えるようになって「夜なべ」が可能になり、そこで夕食が発達した。それまで一日の食事は2回が主流だったのだ。
時間という当たり前の物差しも、このような経過を経て現代のライフスタイルがある。
アングロサクソンが「時間は金である」いう考えを浸透させたが、米英の間でも時刻の捉え方は違う。鈴木さんによれば、「米国で午後4時を16時と即言えない人も多い」。AMとPMが頭に染みついているから計算に手間取る。だからデジタル機器や航空会社のサイトも基本AM/PM表示だ。一方、英国を含む欧州では24時間表示が普通だ。
「中国でも24時間表示には慣れています。ただ、あの広大な国土にして時差がないというのは域内に時差がある米国や欧州と大きな差を生みますね」と鈴木さんは指摘する。
日本でサマータイム採用に抵抗が強いのは、時差が「社会」として身についていないのも一因と考えられないだろうか。
現在、リアルタイムマーケティングが必要とされる。「今、この時」の発信とフィードバックがキーだ。
自分自身の経験として思い出すのだが、ファックス全盛の時代、数日で回答が返ってくるのが普通だった。1-2時間以内での返信は「素晴らしい!」とスピードだけで賞賛された。しかしネットでの交信時代がはじまり、特にスマートフォンの普及で数分以内の打ち返しは当たり前である。「一刻」とは秒単位にさえなっている。
ただ、時間は細かく刻めば刻むほど「グローバル感覚」になると思うと間違う。3月末といえども、花粉症で悩まされているか、サマータイムでウキウキしているかと差がある。
ある国を知るに数年の生活経験が必要と言われる。今年の夏が過去のそれと比較として暑いのか涼しいのかが判断できるようになった時、人々の表情や感覚に寄りそえるからだ。
市場コンテクストを理解するに「感覚差」を常に意識する訓練は欠かせない。