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「堂々と来てほしい」 平日の昼間にHUBに行けない理由
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槌屋詩野さん(後列左)ら 「平日のアフターファイブでも土日でもなく、平日の昼間に堂々と来てほしいんですよ。ちゃんと会社の上司に『HUBに行ってきます』と言って、『そうか、みんなによろしく』って答えが返ってくる。そういう使い方をするのが普通になって欲しいな、と」
こう語るのは今年2月に目黒にオープンしたHUB 東京の代表である槌屋詩野さんだ。
HUBについては以前、ミラノの代表へのインタビューを紹介したことがある。HUBはロンドンにはじまったコワーキングスペースである。現在世界20数か国に6千人以上のメンバーが集まり、社会を変えていくビジネスイノベーターを輩出していく環境を整えているコミュニティでもある。
日本のイノベーションは草の根ではなく大企業のなかから生まれやすい。が、槌屋さんによれば、大企業の社員が平日の昼間にHUBになかなか来てくれないという。個人的には今の社会を何とかしたいと思い、社外の勉強会に参加してネットワーキングに励む。しかし、それをなかなか自分の生業に持ち込めない。
国を問わず大企業の社員は最初の一歩で怯みやすい。それがイノベーションという文脈での弱みであり、組織を守るという意味での強みだ。したがって大企業とイノベーションの組み合わせのなかで挑戦をする日本のHUBなりの課題がでてきているわけだ。
ここでHUBについて少し説明しよう。
フランチャイズであるが、一般に想像する「あれしろ、これするな」というフランチャイズではない。各都市での独立した法人の経営は、その土地の起業家である設立者に任されている。
「フランチャイズをとっているのは、HUBカルチャーを守り育て拡散するためであり、フランチャイズによって収益を拡大するためではありません」と槌屋さん。
「HUBはどうせ輸入モノじゃないの?」と思われがちだ。特にフランチャイズという形態は、イノベーションを外圧に頼る文化と揶揄されやすい。しかし、HUBはいわばプラットホームである。iPhoneというハードはグローバルに普及する共通基盤だが、そこで展開されるアプリやコンテンツはローカル化される。それと似ている。
槌屋さんの話を続ける。
「立ち上げるための承認を1年半かけてウィーンにあるHUBグローバルから得ました。私自身のクオリティ、私とチーム組成の状況、私たちの持つネットワークの確かさ、メンターや私たちをサポートしてくれる人達との関係の深さ。これらが何度も問われました。それも中央のHUB グローバルがとやかく言う、という形ではなく、仲間であるオーストラリアなど他の都市のファウンダー達が、適宜色々と相談にのってくれ、そのおかげで東京にHUBが誕生したのです」
「人間関係の確かさや深さが問われた」という点に注目して欲しい。ぼくが、いいなあと思うのはここだ。
一般的に言って、コンセプトの明確さと人間関係という二つがプロジェクト推進力として要求される。それにも拘わらず、個人の能力や性格が多方面から分析されるように、人間関係そのものが定量的に測られることはあまりない。
もちろんHUBグローバルが東京のチームをそのようにテストしたわけではない。が、色々な課題を与えながら「人間関係の確かさや深さ」をシーンで見抜こうとしたであろうことは想像がつく。この程度のトラブルで人が離れるのか。あの厳しい峠を仲間と乗り切ったか、と。
冒頭のテーマに戻る。大きな会社は名刺で社外とつきあうことが多いし、社内においても何処からかのサポートが得られる仕組みになっている。当然ながら、そこにおいて人間関係の質が問われないことはない。しかしながら常に何かに守られているケースと、いわば裸一貫で荒海に立ち向かう差は大企業のビジネスパーソンが想像する以上に大きい。
イノベーションを実現するには、小さくても良いからお金が動くカタチが見える実験をどんどんやってみることだ。これができないから大企業の歩みは巨象の如くと比喩される。
そこで組織の意思決定プロセスが槍玉にあがる。だが、そもそも挑戦して一歩踏み出す際の人間関係が希薄だからではないのか?はじめの一歩を支えてくれる人が脇にいないから平日の昼間にHUBに行けないのではないか?
イノベーションを望むなら目線をもう一度基本に戻すべきだろう。