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中国カップヌードルで悪戦苦闘 日本の美学が通じない

ニュースカテゴリ:企業のメーカー

中国カップヌードルで悪戦苦闘 日本の美学が通じない

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橋本涼子さん  日清食品ホールディングスの橋本涼子さんは、この3月から香港日清で働いている。入社6年目で同社ではデザイナーとして初めての海外駐在だ。美大の多くの同級生が広告代理店やデザイン製作会社などを志望するなか、グローバルブランドのメーカーで仕事したいと夢みた。

 食に関心の強い彼女はカップヌードルを舞台にしたいと思った。しかし卒業時にデザイナー職の募集はなかったので総合職で入り、デザイン部署への転籍を図った。

 積極的に自分の道を切り開いてきた女性である。

 「香港にはパッケージデザイナーは少ないし、シズル写真を撮影する良いカメラマンもいない。ないない尽くしの中で、香港人の同僚デザイナーとゼロからやらなくてはいけないことが多過ぎて…」と悪戦苦闘ぶりを橋本さんは語る。

 カップヌードルについては東京本社の約10人のデザイナーが世界各地のパッケージデザインを手掛けてきた。馴染のないタイ語の字体のロゴも、東京から何度も現地に足を運びカタチや隙間を調整して実現した。だが中国市場にはもっと現地密着型で立ち向かうことになった。 

 即席麺は世界で今や1000億食を越える。日清食品は今年からケニアを拠点にアフリカでの市場開拓をスタートさせるが、世界需要4割の中国市場での勝負にも負けていられない。香港では70%のシェアを握る。

 中国でカップヌードルはどのように受けとめられているのか、橋本さんに聞いてみよう。

 ニュートラルな印象を与えている

 「特に都市部の若い人たちに人気がありますね。彼らは舶来ものと見ています。香港では日本製と思われていますが、中国では中国製ではない、と。でも、かといって日本製でもない。香港の人気俳優を使った宣伝の仕方もそうなのですが、ニュートラルな印象を与えているようです」 

 日本のカップヌードルは白をベースとしたロゴの大きいシンプルなデザインだ。が、海外市場ではシズル写真で中身が想像できるようになっている。カップ麺とは何なのかがすぐ分かるよう、それなりに説明的でないといけない。カップヌードルのロゴ自身も、国内向けはやや装飾的であるが、海外市場ではアルファベットとして読みやすい工夫がされている。

 中国では「合味道(ハップメイド)」とカップヌードルに近い発音で現地の味に合っているとの意味のロゴが大きく目立っている。これもアルファベットだけでは商品名を覚えてもらえない可能性が高いからだ。

 「即席麺の売り場にいくととても鮮やかです。12種類のそれぞれの香味が色で分かるようになっています。それにシズル写真が加わるわけですからね」と説明する。

 彼女がローカル・デザイナーと一緒に仕事をしていて思うことがある。例えば広告で人の顔を使うとしよう。日本だとある表情を伝えたい場合、他のパーツのインパクトを減らそうと考える。彼らはどうするのか?

 「引き算の美学」は通用しない

 「押しの強いアプローチをします。強調したい部分だけを切り取り拡大するのです。他の要素を弱めるという手法をとらないですね」

 とても対照的だ。余計なものをどんどんと削り取っていくことでエッセンスを浮き上がらせる「引き算の美学」を日本は得意とするが、少なくても中国の麺の売り場でこうした美学は通用しない。そして前述したように色が華やかだ。

 橋本さんがこれから香港や中国で学んでいくことは多い。香港でも上海でも食品パッケージに経験が豊富なデザイナーはそう簡単に見つからない。しかも中国ではパッケージの表記は国家技術監督局という公的機関の認可をとらないといけない。食の安全のためだ。法令が変わると表記も変えないといけないが、それも年に数回とある。

 デザイナーの目を通さないと見えてこない現実が意外に多い。営業の駐在が何年いても気づかない点がデザイナーは気になってしかたがない、ということがある。また、その土地に生活しないと分からない現実感もある。

 こういう観点から橋本さんが香港に駐在する意義は大きいと思う。日清食品だけでなく日本の食品産業の新しい領域開拓に期待したい。

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