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「東京は酷いサイト」五輪招致で米専門家 ドラえもんでIOCの心つかめるの?

ニュースカテゴリ:政策・市況の海外情勢

「東京は酷いサイト」五輪招致で米専門家 ドラえもんでIOCの心つかめるの?

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 日本のアニメは世界で受けている。そのキャラクターを使えばキャンペーンは注目を集めるだろう。子供が喜ぶ親しみやすさは上から目線にならない。最近どこでも見かけるキャッチーな言葉を使えば、とりあえず叩かれはしないはずだ。

 こう考える日本の企業や団体は多い。2020年東京オリンピック・パラリンピック招致キャンペーンも例外ではない。ドラえもんが大使になっている。

 米国のデジタル・マーケティングの専門家であり、『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』の共著者であるデビッド・ミーアマン・スコットさんは、このサイトを今年最悪の英文サイトであると自身のブログで酷評している。要旨はこうだ。

 ヴィジョンで使われている言葉があまりに陳腐だ。聞き飽きた。「イノベーション」「グローバル・インスピレーション」「ユニーク・ヴァリュー」のどれをとっても対抗馬のイスタンブールやマドリッドの趣旨に組み込んで文章は繋がる。つまり東京の価値がアピールできていない証拠である。だいたいそうした表現は読み手の注意をひかない。

 日本に7年間住んだこともあり、奥さんも日本人で東京の素晴らしさはよく分かっている。だが、このサイトは最悪の出来で日本国内向けに考えたコンテンツをそのまま翻訳しているに過ぎない。ドラえもんが日本の子供に人気だからIOC(国際オリンピック委員会)の人たちの関心を掴むとは限らないではないか、とも強調する。

 誰へのメッセージなのかが明確ではないというわけだ。

 賛同する意見がブログのコメント欄に続いている。もちろんIOCのメンバーがサイトだけで開催地の適正を判断するわけではない。が、東京のサイトは国内ロジックがそのまま海外に通用するだろうと楽観的な印象を与えるのが気になる、とのニュアンスが滲んでいる。

 スコットさんは猪瀬東京都知事の舌禍事件には触れていない。ニューヨーク・タイムズ紙(NYT)のインタビューで「イスラム諸国は喧嘩ばかりしている」と話した件だ。しかしNYTの記事が4月26日付けであり、ブログの掲載日は4月29日である。一連の騒動をうけ、異文化やマーケティングへの鈍感さの象徴としてサイトを取り上げたのは明らかだ。

 今月初めミラノでスコットさんと話した際にも、この話題で盛り上がった。

 「イスタンブールが選ばれると思うよ。だって内容が充実したベストのサイトだからね。東京は酷いサイトだから可能性が低いだろう。大切なのは115人のIOCのメンバーの判断に役立つかどうかなんだ。当然、世論の動向も大事。そこでソーシャルメディアなんかでシェアを増やさないといけないわけだけど、東京のじゃあシンパができないよ」とスコットさん。

 たかがサイト、されどサイトである。シェアされないサイト、炎上を招いた猪瀬都知事の発言。この二つが無関係であるはずがない。

 ぼく自身、東京のサイトを眺めていて3つのミスをおかしていると思う。

 キャンペーン全体のなかでサイトは「些細なこと」と位置づけていると思われることが1つ。世界中に応援のうねりを作るに際して発揮するヴァーチャルメディアの効用を十分に理解していると言い難い。

 たとえサイトを「些細なこと」とみなすにしても、「些細なこと」にこそコンセプトが如実に表現されることを見過ごしている。神は細部に宿るという。ディテールに拘ってこそ全体の輪郭が映えるというデザインでよく使われる表現だ。このルールは一般にも適用可能で、これがキャンペーン方針で徹底されていない。2つ目のミスだ。

 最後の点は訴えるべき対象の絞り込みができていない。スコットさんが指摘するように115人の考え方に影響を与えることができるかどうかだ。開催候補国内の支持率はIOCの評価の一つで、子供が心を躍らすことも確かに支持向上に貢献するかもしれない。しかし国内向けドラえもん登用をIOCメンバーに見せる必要はない。

 ブエノスアイレスでの最終プレゼンは9月7日である。

6月15日(土曜日)にローカリゼーションマップの勉強会を開催します。今回のテーマは「『グローバル人材』って本当にいるの?」です。詳細は以下をご覧ください。→http://milano.metrocs.jp/archives/5873

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