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【書評】『アイ・ウェイウェイ主義』艾未未著、木下哲夫訳

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【書評】『アイ・ウェイウェイ主義』艾未未著、木下哲夫訳

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 表現の自由を死守する姿勢

 このところ、アイ・ウェイウェイ(艾未未)が話題に事欠かない。本書に続くアイ氏の著作『アイ・ウェイウェイスタイル 現代中国の不良』(牧陽一編著、勉誠出版)も刊行された。映画「アイ・ウェイウェイは謝らない」も昨年暮れから各地で順次公開されている。

 だが、氏をめぐってもっとも話題となったのは、3年前の4月だった。かねて中国政府批判を繰り返したせいか、北京で当局に拘束され、容疑が明らかにされないまま81日間も留置された。この間、ツイッターをはじめ、インターネット上では、支援のメッセージや中国政府への非難などが熱く繰り広げられた。ツイッターの画面は、日本語、英語、中国語が飛び交ったものである。

 本書は、現代美術家で建築家でもある氏の言葉をまとめた一冊。新聞や雑誌のインタビューでの発言、それにツイッターやブログへの自身の書き込みなど、1行から十数行の短い文章を連ねた金言集のような構成だ。拘留時の様子も振り返り、釈放後も続く行動の制限についても、たとえば次のように記される。

 「自宅軟禁、旅行制限、監視、通話停止、インターネット接続禁止。それでもまだわたしたちにできるのは、この狂った祖国の正体をもう一度見すえること」

 弾圧に屈しないタフさと、決して揺るがない軸足の確かさ-この一文に限らず、どの発言にも、氏の眼差(まなざ)しが端的に綴(つづ)られる。なお、氏のもっとも広く知られた作品は、北京オリンピックの主要施設「鳥の巣」だろう。だが、五輪についてこう語る。

 「政治家がどれだけ長く市民に讃歌を歌えと命じようと、どれほど多くの花火を空に打ち上げ、外国の要人を抱擁しようと、人々の心に紛れもない歓びと祝いの気分を起こすことはできない」

 中国で表現活動を続けることの困難さが、切実に理解できる。だが、それ以上に個人の権利と表現の自由を闘ってでも死守しようとする氏の姿勢に圧倒される。だからこそ、その警句は国を超えた普遍性を備えるのだ。(ブックエンド・1575円)

 評・新川貴詩(美術評論家)

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