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【書評】『今上天皇 つくらざる尊厳 級友が綴る明仁親王』

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【書評】『今上天皇 つくらざる尊厳 級友が綴る明仁親王』

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 ■皇太子時代の陛下の秘話

 即位されて以降の陛下については被災地や各種施設へのご訪問などのご公務や折にふれての記者会見を通じて象徴天皇としてのなさり様は詳細に報じられているが、皇太子時代については断片的にしか伝えられてこなかった。

 それだけに幼稚園時代から75年にわたる長いお付き合いをしてきた著者ならではの非常に興味深い内容となっている。

 特にお二人が乗馬を通してさらに親交を深められてきただけに馬にまつわるエピソードが多いが、陛下が審査員が演技を採点して順位の決まる馬場馬術よりも、情実の入り込む余地のない障害飛越を好まれた話からは特別扱いされることを嫌い、常に公平でありたいというご性格が良く表れている。

 乗馬の際の休憩時間に馬の面倒を見てくれる人たちまでお茶の席に同席させる心遣いは同じ目線で国民と向き合い、寄り添いたいと言う現在の陛下のなさり様がお若い頃から培われたものであることがわかる。

 乗馬をなんとかご一家で、と言うお気持ちから美智子さまにもかなり厳しく指導されたことが、お子様方には未経験の母を無理やり馬に乗せようとしているように映ったのか、お子様方が御所の壁に「乗馬反対」のビラを貼ったと言うエピソードがほほえましい。

 のちに美智子さまばかりでなく、浩宮さま、礼宮さま、紀宮さまとご一家で打毬(だきゅう)を楽しまれるまでに上達されたのだが…。

 今まで知られることのなかった、こうした数々のエピソードを語れるのも陛下が心を許せる友人として信頼を寄せておられるからだが、今さらながら真摯(しんし)で全くぶれのない陛下のなさり様が若い頃の陛下の教育に携わった人々、特に小泉信三氏と英語教師、エリザベス・グレイ・ヴァイニング夫人が陛下の人格形成に大きく寄与されていたことがよくわかる。

 一人の同級生としてではなく心から陛下への尊敬の念が根底に感じられる一冊である。(明石元紹(もとつぐ)著/講談社・1995円)評・久能靖(皇室ジャーナリスト)

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