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水遊び、木登り楽しんで! 子供のための「冒険遊び場」作り広がる

ニュースカテゴリ:暮らしの余暇

水遊び、木登り楽しんで! 子供のための「冒険遊び場」作り広がる

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冒険遊び場「あさかの森プレーパーク」で遊ぶ子供たち=埼玉県朝霞市  遊ぶ場所・遊ぶ時間・遊ぶ仲間の3つが「ない」とされる現代の子供たち。子供の自由な遊び文化を守ろうと、各地で「冒険遊び場(プレーパーク)」を作る活動が広がっている。子供たちの日常に取り戻す試みだ。(村島有紀)

 水遊び、木登り

 「プレーパークは自由に遊べる所。マシュマロを焼いたり水遊びをしたり、木登りもできる」

 小学3年生の藤井綾子ちゃん(9)は弟(5)と一緒に冒険遊び場「あさかの森 プレーパーク」(埼玉県朝霞市)に遊びに来た。昨年度から始まり、今年度は毎月第2週の水曜日から日曜日、5日間連続で午前10時~午後4時まで開催している。

 約3ヘクタールの敷地にあるのは、木材やブルーシート、くぎ、チョークにドラム缶など。プレーリーダーの関戸博樹さん(33)によると、最初は「何したらいいの?」と聞く子供が多いが、「何をしてもいい」と分かると、周囲の子供たちの様子を見ながら、工作を始めたり、穴を掘ったり、落書きをしたり…。

 子供たちから「水遊びがしたい」と聞くと、関戸さんはブルーシートに水をため、プールを作る。ときには木の上にツリーハウスを作ることもあり、子供たちの「遊びたい」気持ちに応える。

 今月12日には、たき火のコーナーで7歳の男児がお玉にグミを入れ、火で溶かして水あめを作り、周囲の人に配っていた。「おいしい」と言うと、得意そうな笑顔を見せる。男児の母親(38)は「マンションの部屋を一歩出たら、廊下は走らない、公園ではボールで遊んではダメ、大きな声を出してはいけませんと、注意してばかり。子供が自由にしたいことをして過ごせる時間は私にとっても癒やしの時間です」。

 長女(3)と遊びにきた主婦、平田芙美子さん(36)も「自分の子供も他の子供も分け隔てなく接することができ、ここに来てから地域の一員という実感も生まれた」と話す。

 知らない子供も

 運営するのは、NPO法人「あさかプレーパークの会」(app.45web.net)。子供たちの遊びの環境に危機感を抱いた住民によって、約10年前に結成された。昨年からはNPO法人になり、同市から「冒険遊び場づくり実施業務」の委託を受けた。

 代表の野上真由美さん(57)は「当時は公園の遊具の事故が相次ぎ、外で遊ぶ子供たちが少なくなってきた頃。『危険だから』と切り捨てるのではなく、どろんこになって遊んだ経験や木登りのスリル、火の怖さやありがたさも知って大人になってほしいと思った」と結成の経緯を振り返る。

 冒険遊び場には大人が常駐するが、通りがかりの子供たちがふらりと立ち寄れる雰囲気がある。名前も知らない子供たち同士が同じ作業をしたり、声を掛け合ったり、緩やかにつながる。子供と遊ぶボランティアに来ていた大学2年生の下田絢子さん(19)は「子供たちがこんなに生き生きとしていることは他の公園では見られない。多くの場所に広がってほしい」と話していた。

【用語解説】冒険遊び場

 子供たちが「自分の責任で自由に遊ぶ」をモットーに、地域住民によって運営される遊ぶ場。大人は子供のやりたい遊びを見守り、子供同士のトラブルもできるだけ自分たちで解決させる。プレーリーダーと呼ばれる専門職員が、子供と遊びの素材(ロープや廃材、シートなど)を用意したり、危険箇所を点検したりしている遊び場が多い。整備された公園よりもガラクタが置かれた空き地の方が子供たちが生き生きとするという視点から、1943年にデンマークで提唱され、日本では30年ほど前から各地で取り組みが始まった。NPO法人「日本冒険遊び場づくり協会」(東京都世田谷区)によると、常設と不定期開催を含め、全国で約400ある。全国の冒険遊び場は同協会ホームページ(www.ipa-japan.org/asobiba)で検索できる。

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