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【早坂礼子の経済ウォッチング】言葉のバリア解消へ 多言語対応サービスの芽生え

ニュースカテゴリ:暮らしの生活

【早坂礼子の経済ウォッチング】言葉のバリア解消へ 多言語対応サービスの芽生え

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地下鉄駅構内の案内表示。外国語の併記は一部に限られ、外国人観光客が増加する中、拡充が求められている  9月2日、舛添要一東京都知事は都内で開かれた英国王立国際問題研究所(チャタムハウス)主催のセミナーで講演し「2020年の東京五輪ではビジターの利便性向上のため、言葉のバリアフリーを進めたい」と強調した。今年も訪日外国人が1000万人を超す見通しだが、英語以外の言語を話す渡航者も少なくない。多言語対応サービスは喫緊の課題だ。

 「火事ですか、救急ですか」。消防署にはときおり外国人から119番コールが入る。署は一刻も早く状況と場所を把握して緊急出動をかけたいが、肝心の相手の言語がわからない。

 ホテルでも外国人宿泊者から問い合わせがある。「部屋のインターネットの接続方法がわからない」。鉄道会社も同じだ。「電車の中に忘れ物をしたのだが」-。病院や銀行、官公庁でも、トラブルに直面した外国人からのSOSはもはや珍しくない現象だ。

 そんなとき、依頼を受けたオペレーターが外国語で直接話して日本語に翻訳するサービスがある。「マルチランゲージサービス」という事業で、展開しているのはディー・キュービック(本社・東京都渋谷区)、IT関連のユーザー支援を行っているキューアンドエーグループの企業だ。親会社がコールセンター業務で培ったノウハウを生かし、2012年に事業を始めた。

 2~3カ国語を解するオペレーター25人が3交代・24時間体制でコールセンターに待機し、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語と5つの言語で取引先のニーズに応える。20代から40代までオペレーターの国籍は様々だが、全員が日本語検定1級の資格を有し、必要に応じて医療通訳や救命講習、マナー・プロトコール検定(国際儀礼)の資格試験など専門技能の研修を受ける。会話の通訳だけでなく、メールや標識など文書の翻訳サービスもある。取引先は官公庁やホテル、鉄道会社などで、サービス内容にもよるが、料金は月3万円からという。

 同社の牛島祐之社長は「いろんなところから引き合いがあって手応えを感じます」と話し、現在2億円の売上高を「2020年までに30億円に増やしたい」と意気込む。

 目標達成への一番の課題はオペレーターの量と質の向上だ。今後は入国査証(ビザ)の緩和などで訪問客が増加しているタイ語の対応を増やし、さらにロシア語やマレーシア、ベトナム、インドネシアなどASEAN(東南アジア諸国連合)各国の言語も順次、注力していく方針だ。翻訳対応言語を増やすため、特許や金融、法務などビジネス関連の通訳・翻訳事業で定評のある翻訳センター(本社・大阪市中央区)とも提携した。だが、景気の持ち直しでオペレーターの人件費が上がっている。マルチリンガルなオペレーター確保は簡単ではない。

 スマートフォンなど携帯端末による翻訳サービスとの競合もある。それでも牛島社長は「我が社の基本である対面ならではのキメ細やかな対応がきちっとできれば、自ずとクライアント開拓もできてくるはずです」と強気で「五輪需要だけでなく、訪日外国人はこれからもっと増えていく。日本は人口が減っているから外国人に頼らざるをえないでしょう」と言う。

 言葉のバリア解消につながる多言語対応ビジネスの今後に注目したい。

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