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【天安門車炎上】ウイグル族5人拘束 弾圧強化が裏目 権力闘争招く恐れ

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【天安門車炎上】ウイグル族5人拘束 弾圧強化が裏目 権力闘争招く恐れ

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 中国国営新華社通信によると、北京市公安当局は10月30日、北京中心部の天安門前で起きた車両突入事件を「テロ事件」と断定し、ウイグル族の容疑者5人を拘束した。当局は、天安門に突入、炎上した車両の中から、ガソリンが入った容器やナイフ、鉄の棒、宗教的スローガンが記された旗が見つかったとしている。

 拘束された容疑者の性別などは不明だが、当局が同日までに、写真付きで手配書を配布した8人の容疑者の一部とみられる。当局は、容疑者の宿泊先から数本のナイフと「聖戦」の旗を押収。「周到に練られた、組織的かつ計画的な攻撃」と断じた。

 一方、炎上した車に乗っていた実行犯は、ウイグル族の「ウスメン・ハサン」とその妻、母親と断定された。同市公安局報道官は、3人が衝突後、自らガソリンに火をつけて自殺したと説明している。

 30日、中国版ツイッター「微博」に「天安門嫌疑人」とのタイトルで投稿された手配書には、新疆ウイグル自治区の8人が容疑者として掲載されていた。それぞれに付記された身分証番号から、8人中4人は女性だとみられる。うち2人は丸刈り姿の写真が掲載されていた。70歳の高齢女性も含まれており、車中で死亡した母親の可能性もある。(北京 川越一/SANKEI EXPRESS

 ≪弾圧強化が裏目 権力闘争招く恐れ≫

 11月9日に開幕する中国共産党の重要会議である第18期中央委員会第3回総会(3中総会)の前に、中国政治の心臓部である北京の天安門前で発生した車両突入事件が、今後の共産党内の権力闘争を加速させる可能性が出てきた。中国メディアによると、ウイグル族の関与が明らかとなり、習近平主席(60)が主導する最近の少数民族への高圧的な政策が裏目に出た形だ。今後、習主席と距離を置く党内の改革派を中心に政策転換を求める声が高まる可能性がある。

 衝突、武装警官が鎮圧

 新疆ウイグル自治区では、4月から6月にかけて警察官とウイグル族グループが衝突する事件が相次いで発生した。その際、習指導部は武装警察官を多数投入し、発砲を許可するなどして鎮圧した。その後、ウイグル族から刀を取り上げ、一部の地域でひげを禁止するなど宗教弾圧を強化し続けた。

 共産党筋によると、こうした強引なやり方に対し、「民族間の対立を深刻化させる」と言った批判が、胡錦濤前国家主席が率いるグループなどから寄せられた。習主席自身の強い意向で実現した6月訪米で具体的な成果をあげられなかったこともあって、習主席の内政・外交政策を否定し、全面転換を求める意見が党内で急増したという。

 関係者によると、習主席は後ろ盾である江沢民元国家主席に助けを要請。完全引退したはずの江氏は7月にキッシンジャー元米国務長官と会談した際、習主席への全面支持を表明。ウイグル問題への対応にも言及し、「断固たる決断で、迅速に沈静化させた」との「お墨付き」を与えた。党内で今でも大きな影響力を持つ江氏が習主席に助け舟を出したことで、習主席への批判は一時沈静化した。

 遺族が「自爆テロ」

 しかし、香港の人権団体によると、今回の突入事件の死者の一人は、新疆ウイグル自治区ルクチンで6月に発生した暴動の際に、警察に射殺されたウイグル族の遺族だという。報復する目的で「自爆テロ」を仕掛けたことが確認されれば、習氏の少数民族政策の「失敗」が証明され、批判の声が再び高まることも考えられる。

 3中総会では、習氏に近い張春賢新疆ウイグル自治区書記に対し車両突入事件の責任を問う準備が進められているとの情報もあり、改革派が、習主席から政策制定の主導権を奪う動きに出る可能性もある。(北京 矢板明夫/SANKEI EXPRESS

 【中国のウイグル族をめぐる主な経緯】

1949年10月1日  中華人民共和国成立

1955年10月    新疆(しんきょう)ウイグル自治区成立

1977~98年    新疆などで分離独立求める暴動やテロ多発

2004年       亡命ウイグル組織「世界ウイグル会議」(本部ドイツ・ミュンヘン)発足

2007年1月     中国公安当局がパミール高原で独立派の東トルキスタン・イスラム運動(ETIM)の訓練基地を攻撃

2008年1月     区都ウルムチで治安部隊がテロ組織拠点を急襲、2人殺害

2008年3月     ウルムチ発北京行き旅客機でウイグル族女性がテロ未遂

2008年4月     五輪選手誘拐や爆破テロを計画したとしてウイグル独立派の45人拘束

2008年8月     新疆で警官襲撃など五輪妨害狙うテロ相次ぐ

2009年6月     広東省●(詔の言を音に)関市の工場で、ウイグル族労働者が漢族に襲われ2人死亡

2009年7月     ウルムチで大規模暴動、197人死亡、1700人負傷

2011年7月     自治区ホータン市で派出所襲撃犯14人を射殺

2013年4月     自治区カシュガル地区で武装グループと警官らが衝突、計12人死亡

2013年10月    カシュガル地区で9月から1カ月間でウイグル族15人を射殺、約100人逮捕と米政府系ラジオ

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