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政治
進まぬ首相の国会負担軽減
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参院予算委員会に出席し、質問を聞く安倍晋三(しんぞう)首相=10月23日、国会・参院第1委員会室(酒巻俊介撮影)
外交や政務に専念するため、首相の国会答弁の負担軽減を目指す国会改革が遅々として進まない。しびれを切らした安倍晋三首相は10月末、臨時国会開会中の平日にもかかわらずトルコを訪問。改革の先行実施をアピールしたが、野党が反発を強めている。
首相は国会で国政に関する答弁を行う義務を負うが、現在のような長時間の拘束では、政策を熟慮することや外国で重要な国際会議に出席することもままならない。国益を損なう恐れもあり、安倍首相のイライラは募るばかりだ。
今年の通常国会では、安倍首相の衆参両院の予算委員会出席は約180時間にも及んだ。この間、安倍首相は国会に拘束され、ほかの政務をこなすことができなかった。
また、閣僚も予算委員会で安倍首相と肩を並べていた。各省の副大臣は閣僚に代わり答弁する役割を担うが、実際は野党の求めにそのまま応じて閣僚が答弁しているケースが目立っていた。
このように諸外国と比べても議会に対する政府の対応が手厚いため、国会が開かれるたびに首相の負担軽減策の必要性が政府・与党内で議論されてきた。
民主党は政権与党だった2011年、首相の国会出席を緩和する改革案を提起した。だが、野党転落後、首相答弁が減れば政府追及の手立てが失われると警戒。与党側が自民、公明、民主の3党に日本(にっぽん)維新の会を加えた4党で協議する考えを示すと、民主党が「野党全党で議論すべきだ」(大畠章宏幹事長)と抵抗を始めた。
結局、民主党は新たに改革案をまとめ、国会審議が一年中できる「通年国会」の検討に加え、首相が予算委員会などで恣意(しい)的に国会答弁を避けることのないようクギを刺す方針に転換した。
一方、安倍首相サイドの加藤勝信官房副長官は10月25日の衆院議院運営委員会理事会で「トルコは安全保障上も重要な国だ」と、首相外遊の了承を野党に迫った。野党は「5月に行ったばかりなのに再訪する必要があるのか」と反発。だが、外遊に踏み切った首相は10月28日に始まった衆院国家安全保障特別委員会のNSC法案の実質審議に顔を見せず、野党はほぞをかむしかなかった。
安倍首相の攻勢は続く。11月5日の政府・与党連絡会議では「国会改革は、国益の観点から与党がリーダーシップを発揮し真剣に取り組むべき課題だ」と早期実施を強く求めた。
こうした安倍首相のプレッシャーで対応を迫られた野党は11月7日、重い腰をようやく上げ、国会改革に関する全党実務者協議に初めて臨んだ。すでに改革方針を決めている自民、公明両党と民主党、日本維新の会、新党改革以外の野党も11月中に改革案を提示することを確認した。
そもそも自民、公明両党は維新の改革案を尊重したうえで、与党の改革案をまとめた。首相の委員会出席を原則、予算委員会に限り、回数や時間に上限を設定する一方、党首討論の回数や時間を増やすことが柱。3党とも首相の負担を軽減すべきとの主張だ。残る野党は首相の負担を軽減する改革案には慎重姿勢だ。
このため、今後の協議では、全党の意向を反映した形で議論を進めれば、収拾がつかなくなり、「決められない政治」が露呈してしまう。一方で、与党が維新とともに強引に改革案をとりまとめれば、残る野党から「横暴」との批判を浴びかねない。12月6日までの臨時国会中に国会改革が実現できない可能性もあり、安倍首相が気をもむ日々は当面、続きそうだ。(比護義則/SANKEI EXPRESS)