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欧州の伝統、京の素材 ハム、ソーセージ リンデンバーム
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フォアグラと豚肉や鶏肉、鴨肉のパテがパイ包みされたフランスの古典的な前菜「パテ・アン・クルート」(100グラム750円)は大人の味わい。もちろん、ワインやシャンパンとも好相性
京都で初めてという自家製ハムとソーセージの専門店「リンデンバーム」。ヨーロッパ伝統の味を伝えるとともに京の素材を使った新感覚のソーセージも創作。ていねいに手作業で作られたソーセージやベーコンなどがずらりとショーウインドーに並び、古都のグルメの目を楽しませている。
店主の吉田英明さんは、ホテルのコックとして働いた後、独立して今出川でフレンチレストランを営んでいたが、見た目の美しさや浅く広い知識が必要となるコックという立場には超えられない壁を感じたという。そんなとき脈々とその地方で受け継がれてきた素朴な伝統食に興味を持った。
「ヨーロッパでは婚姻があると、その地方の食が伝わるという風習があります。例えばシュークルートはチンギス・ハーンの時代にモンゴルから伝わったキャベツの漬物に端を発するんです。そんな民族学の世界にひかれたこともあって、欧州各国の伝統食に不可欠なソーセージを作っていきたいと思ったんです」と吉田さん。フランス語で豚肉加工品の専門店を「シャルキュトリー」という。
ソーセージやハム類は50種類から、日によって入れ替えられ、常時20種類ほどが並ぶ。定番のウインナー系をはじめチューリンガーや白ソーセージ「ヴァイスブルスト」、ポトフに欠かせない太めのソーセージ「モンベリアール」も。加えて京都らしさを出したウインナーもお目見えする。
例えば、京番茶ウインナーは番茶が練り込まれたウインナー。かむと、ぷりっとした食感のあと、肉汁があふれ出し、最後は番茶のさわやかさが口の中いっぱいにひろがる。京七味ウインナーは、うどんやそばに欠かせない七味が舌をぴりりと刺激する。
「ウインナーやソーセージは、その土地に由来する名前がつけられているものが圧倒的なんです。もちろん地方によっては肉の混ぜ方も異なるし、ハーブ類を入れたりと多彩です。もしフランスに京都があったら、きっとその特産を使ったものが作られているなと思って」という。
ちょうど猪肉のソーセージを作るところ、というので工程を見せていただいた。大きなボウルを使い、ひき方を変えた猪肉6キロと塩などを丹念に手で混ぜ合わせる。さらに香辛料のパプリカを入れて味に深みを持たせてから、ソーセージスタッファーと呼ばれる機械を使って、水で戻した塩漬けの羊の腸に詰めていく。空気が入るともちが悪くなるので、手のひらの感触を頼りに丸く均一に詰めなければならない。約130本のソーセージができあがり、後はじっくりと薫製される。
もちろんソーセージだけではなく、フレンチ出身のシェフらしく、酢漬けのラペなどのフランス総菜をはじめ、パテやテリーヌも。「パテ・アン・クルート」は、フォアグラや鴨肉などのパテをパイ生地で包んで焼き、あとからコンソメのジュレを注入する凝りよう。フォアグラのほろ苦さにパイのパリパリ感がなんとも楽しい。思わずワインを飲みたくなる味わいだ。本場フランスのシャルキュトリーの会長が京都を訪れたとき、絶賛した味というのもうなずける。また昼は、パテやソーセージのサンドイッチとサラダが入った手軽なランチボックスも登場する。
まもなく京都は紅葉を終えようとするシーズンだが、ランチボックス片手に近くの鴨川沿いを散策して、すんだ空気と鮮やかな山の彩りを楽しみながらピクニック気分を味わうのも一興だろう。(文:木村郁子/撮影:恵守乾/SANKEI EXPRESS)