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経済
イグサ農家に希望 畳でおもてなし
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熊本県のイグサ農家数(1975年~2010年) 畳産業の衰退に頭を悩ませる熊本県のイグサ農家が、2020年の東京五輪を契機とした畳の需要増に希望の光を見いだしている。林芳正農林水産相が選手村での畳の使用を推進したいと述べたためで、地元自治体は関係機関への働き掛けを始め、撥水(はっすい)効果を持つ天然畳表の開発も進む。「畳でおもてなし」構想で未来を切り開けるか。
「新聞ば見たか?」。東京五輪決定直後の昨年(2013年)9月18日、熊本県最大のイグサ産地である八代市の田中和彦農産係長(43)に、JA職員から電話があった。スポーツ紙を開くと、林農水相の発言を報じる記事が。「なんてありがたい」。胸が躍った。
林農水相の構想は、選手村で「選手が使う施設をなるべく木で造り、畳の部屋で落ち着いていただく」というものだ。
国内のイグサ生産量は、前回の東京五輪が開かれた1964年ごろは約10万トンだったが、畳離れや輸入品増加などで2011年には約1万トンまで減少。有力産地だった岡山、広島などの収穫量が大幅に落ち込み、国産シェアは熊本県が96%と独占状態に「なってしまった」(田中係長)。
その熊本もイグサ農家はピーク時の1万戸程度から約600戸まで減少。県をあげて高級品種の栽培を推奨し、ブランド力強化による生き残りを図ってきたが、後継者不足など悩みは尽きない。
そこに降って湧いた「畳でおもてなし」構想。八代市の動きは一気に活性化した。中村博生市長がイグサ製タペストリーを林農水相に届け、文部科学省や東京都にも畳の使用を陳情。市職員らは広告代理店などが関わる五輪開催の流れを学び、売り込みへ作戦を練る。
「東京開催だが、地方にも活躍の場が訪れている」と話す田中係長。今後は県や近隣自治体も巻き込んだ活動を目指す。
八代市のイグサ農家、田淵稔さん(50)は、2年前に京都市の畳販売店と共同で、天然素材の溶剤を使った撥水畳の開発を始めた。イグサ産業衰退の一因は、飲食店や賃貸住宅で汚れにくい「化学繊維の畳」が増えたためと考えた田淵さんは、既にジュースやワインの汚れも拭き取れる試作の天然畳を完成させた。
選手村などで使われれば、汚れない天然畳を外国人にもアピールできる。田淵さんにとって東京五輪は「製品化の大きな目標」となった。
農家の減少に伴いメーカーが機械の部品製造を中止したため、田淵さんのイグサ植えは人を雇っての手作業だ。農家は収穫から畳表の製造まで自前で行うことが多く、設備投資の負担も大きい。
「このままではイグサ農家の将来は暗い。熊本産の撥水畳が東京五輪で使われ、夢のある話を実現したい」。田淵さんは力を込めた。(SANKEI EXPRESS)