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社会
社会人講師に学ぶ「土曜塾」(2-2) 自分を決めつけるな/まず試してみよう
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ITベンチャー社員の川目裕也さんが「現在の自分」を知るために行なったグループワーク=2013年5月25日(中央大学_土曜塾企画委員会、有志学生記者撮影)
≪自分を決めつけるな ITベンチャー社員、川目裕也さん≫
「地図には、2つの重要な要素がある。それは現在地と目標地点である。これがなければ、地図の意味をなさない。人生でいうならば、現在の自分と、将来の目標や夢である」
講師のITベンチャー企業ベーシックに勤務する川目裕也さん(25)はこう言った。そして、フランスの小説家アルベール・カミュの「人生とは、全ての選択が積み重なったものである」という言葉を引用して、「現在地と目標地点までの間にはいくつもの道が存在し、その選択こそ人生である」と話した。
現在の自分とは…。それを知るために、「自分は気づいていないが、他人が気づいている部分」を発見することを目的としたグループワークに取り組んだ。
まず、いろいろな項目ごとに、自分が考える自分についてシートに記入する。その後、1分間でグループのメンバーに自己紹介を行い、それに基づいて、グループのメンバーが、その人についてどういう人だと思ったかの評価を項目ごとに書き込む。2つを比較することで、「自分が考える自分」と「他人が考える自分」の間の「ギャップ」を発見できる。
川目さんは「ギャップがあったとしても、どっちらも本当の自分だ」と言う。例えば、シートの中に、「リーダーか、追従者か」という項目があり、自分は「追従者」と記入したが、グループのメンバーは「リーダー」と評価されたとする。「そこで心機一転して、リーダー的な行動を取るようなればいい。どちらも本当の自分だから」と、川目さん。
現在の自分を決めつける必要はない。別の現在の自分を知ることができれば、別の夢や目標を持つこともできる。川目さんが教えてくれた。
≪まず試してみよう 監査法人勤務、中村真理愛さん≫
「20本のパスタ、ひも、紙テープ、マシュマロ1つを使って、一番高い塔を作る競争です」
講師であるPwC Japan あらた監査法人で勤務し、250人程度の組織の人事戦略の立案から実行サポートを行っている中村真理愛さん(33)が出した変わったお題に参加者は、頭をひねった。制限時間は15分、参加者は初対面ばかり。
各チームから「どうしよう?こんなのやったことないよ」という不安そうな声ばかりが上がる。ああでもない、こうでもないと議論を交わし、塔の建設に取りかかる。「慎重に!慎重に!やったー完成!」という歓喜の声が上がれば、「あっー!後少しだったのに!」という落胆の声も。初対面の参加者は、知らぬ間に「同志」へと変わっていた。
土曜塾の講師はいろいろなテーマを参加者に与える。今回は、「まず試してみること」がテーマだった。
大学の授業であれば、学生は受け身で講義を聴くだけだ。しかし、土曜塾では講義の後に、グループワークが行われる。講義で聴いたことを議論し発表するという体験を通じ、単なる知識で終わらず、成長につなげることができる。
今回の「マシュマロ・タワー」の建設は、「議論ばかりに時間を割くのではなく、まず作ってみて、それを改良していく方がうまくいく」ということを体験することが目的だった。
講義を聴くだけでなく、自分たちで体験して、「形」にすることで、よりその大切さを実感できる。これが土曜塾の最大の魅力ではないだろうか。(今週のリポーター:土曜塾企画委員会 有志学生記者/SANKEI EXPRESS)
土曜塾は、多種多様な原石が集まり、磨き合う場である。講師や参加者同士の出会いを通じて磨かれた原石は、想像もしなかった鮮やかな輝きや色を放つ。土曜塾でのかかわりが、今まで知らなかった化学反応を起こすためだ。出会った人たちと何かに取り組むことは、自分自身を強く認識する機会でもある。議論や発表は自分を知るきっかけになる。
現在の自分を知ることは、将来の目標や夢を思い描くことにつながる。人生の地図の中で、自分が今立っている場所から、四方へと無限の可能性が広がっていることに気づく機会に土曜塾がなればと思っている。
中央大学 土曜塾企画委員会 有志学生記者
取材・記事・写真:武内優里子(3年)、大浦彰友(3年)、北村慎太郎(2年)、野村遼太(2年)、土屋涼介(2年)、佐藤広基(1年)、勝野智香子(1年)