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オーロラを目指す旅(上) 在来線 あっという間に国境越え

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オーロラを目指す旅(上) 在来線 あっという間に国境越え

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朝8時、通勤列車がせわしなく行き交う朝のコペンハーゲン中央駅。空がやっと明るくなってきた=2013年12月4日、デンマーク・首都コペンハーゲン(桐原正道撮影)  北欧の玄関口、デンマークの首都コペンハーゲンを起点に鉄道周遊券「ユーレイルパス」を利用して北欧を縦断する旅に出た。目指すは北極圏。そして、目的はノルウェーでオーロラを見ることだ。

 列車はコペンハーゲン中央駅を午前9時過ぎに出発。在来線でありながら、通勤客だけでなく旅行者も利用するため、通常のベンチ状座席のほかにクロスシートもある。シルバーの車体に黒いラインの入ったおしゃれな列車だった。

 走り出してまもなく国境の橋「オーレスン・リンク」に差し掛かった。橋は、三角形の持つ独特の性質を利用したトラス橋なので車窓からの眺めはあまり楽しめない。橋を渡ると列車はあっという間にスウェーデンのマルメ中央駅の地下ホームに滑り込んだ。

 コペンハーゲンから約30分、途中でパスポートのチェックもなければ荷物検査もない。欧州の国々を自由に行き来できる「シェンゲン協定」の加盟国間では、国境の検査は原則として行われていない。ポケットに入れたユーレイルパスが唯一のパスポートだった。

 マルメからはスウェーデン鉄道の主力列車「SJ2000」に乗り込んだ。日本の新幹線のようなもので、最高時速は210キロ。広々とした車内ではビジネスマンがパソコンを開いて快適に作業をしていた。スウェーデンの列車や駅では、Wi-Fi(無線LANの一種)が完備されているところが多く、容易にメールチェックやインターネットができた。

 続いて訪れたのはスウェーデンの首都、ストックホルム。王宮にほど近い、ストートリィ広場にあるクリスマスマーケットを訪ねた。記者が訪れた(2013年)12月は、ヨーロッパの都市ではどこでも、町の中心にクリスマスの飾り付けをした屋台が並ぶ「クリスマスマーケット」が開かれる。多くの観光客にならって、雑貨の並ぶ露店でホットワインを買ってみた。氷点下のなか、レーズンやアーモンドの入ったホットワインを飲み干すと、体が芯から温まり心なしか華やいだ気持ちになった。

 ≪嫌な予感的中 マイナス28度の大移動≫

 ストックホルムを出た列車はノルウェーの首都、オスロへと向かう。緯度の高い北欧ではこの時期、日照時間が極めて短い。ちなみにストックホルムは午後3時を過ぎるとあたりは暗くなってくる。

 北極圏に入ると、一度も日が昇らないまま夜になってしまう「極夜」の地域もあり、昼なのか夜なのか、果たして今食べているのが昼食なのか夕食なのかも分からなくなってしまう。

 天候不良もあり、結局今回の旅で日の光を見たのは、オスロへと向かう列車の中が最後となった。

 ドンドンドン! 誰かが部屋のドアを強くたたいた。ノルウェー中部の都市、トロンハイムから乗った夜行列車の個室で眠っていたときのことだ。寝ぼけ眼で扉を開けるとそこには車掌の姿があった。時刻は午前5時前、あたりは白銀の世界だ。

 「We have a problem」。欧州を襲った寒波の影響か、列車が故障したのでバスに乗り換えてほしいと言う。車掌によるとこんな寒波はめったにないらしい。

 嫌な予感はあった。列車は定刻に入線してこなかったし、乗車するやいなや手洗いの水が出ないことに気づいた。「ああ、やっぱりか」

 そして、なんとここからはバスを4回乗り継いで、17時間かけた大移動が始まった。バス内の温度計を見ると外気温は氷点下28度を示していた。(写真・文:写真報道局 桐原正道/SANKEI EXPRESS

 ■ユーレイルパス 1959年創設。1つのパスでヨーロッパを回れる鉄道周遊券。ユーレイルに加盟するヨーロッパ24カ国のほぼ全域を678ユーロ(約9万4000円)でカバーするグローバルパス、隣接する3から5カ国を組み合わせるセレクトパス、地域を絞って回るリージョナルパス、1カ国をじっくり回るワンカントリーパスの4種類に大別される。今回の旅ではデンマークからスウェーデン、ノルウェーを抜けるセレクトパスを使用。www.eurailgroup.org

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