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科学
【アラスカの大地から】頼れる相棒 ブッシュパイロット
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上空6000メートルを木の葉のような飛行機で飛ぶ。激しい揺れにも動じないパイロットが心強い=2009年12月30日、米アラスカ州(松本紀生さん撮影) ブッシュパイロットという職業がある。道路も鉄道もない辺境の地を小型飛行機で飛び回り、人や物資を運ぶ操縦士の名称だ。彼らの助けなくしてはアラスカでの撮影は成り立たない。
厳冬期。マッキンリー山麓の氷河上でかまくら生活を送りながら、オーロラを撮る。その氷河へたどり着く唯一の手段が、パイロットによるフライトなのだ。
数メートルに達する積雪に覆われた氷河に無事着陸するには、並外れたテクニックを要する。着陸地である雪原が、あまりに均一に白く平坦で、どこまで高度を下げれば機体が雪面に接するのか、把握できないからである。
目を凝らしても地面がどこにあるのか分からない。不用意に着陸を試みれば、機体は雪面と突然接触し、重大事故は避けられないだろう。
そんな無謀とも思える環境での着陸を可能にするのが、腕のあるブッシュパイロットなのである。
≪真っ白な雪原 誘導灯は黒いゴミ袋≫
着陸に備えた準備は出発前から始まる。黒いゴミ袋にこぶし大の雪球を入れ、大きなてるてる坊主状の袋を3、4個用意する。
着陸したい氷河に近づくと旋回しながら地形を調べ、次第に高度を下げていく。そして着陸すべき雪原すれすれを一直線に飛びながら、突然窓を開け、てるてる坊主を投げ捨てるのだ。次々と放たれた黒い袋は力なく雪上に舞い降り、純白のキャンバスに確かな黒点を刻む。機上から見るそのサイズは畳の上の米粒のようではあるが、熟練したパイロットにとっては滑走路に輝く誘導灯なのである。
さらに数回の旋回を重ねるうちに着陸のシミュレーションを頭で行い、いざランディング。手に汗握る助手席の写真家をよそに、パイロットはいたって平静だ。何度かのバウンスの後に、機体はまるで最初からそこに着陸することが決まっていたかのように、何事もなく雪上に落ち着く。
2カ月後の迎えの日を手帳に書き込み機内に乗り込むパイロット。これほど頼もしいパートナーは他にはいない。(写真家 松本紀生、写真も/SANKEI EXPRESS (動画))