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女性議長とともにFRB新世紀へ

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女性議長とともにFRB新世紀へ

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 【アメリカを読む】

 背筋をぴんと伸ばして右手を上げ、宣誓中は真剣そのもの。それでもカメラに向かうと、トレードマークの少女のような大きな瞳で、少しはにかんだような笑顔が印象的だった。

 2月3日にワシントンの米連邦準備制度理事会(FRB)本部で宣誓を行い、副議長から第15代議長に昇格したジャネット・イエレン氏(67)。自分よりはるかに大きなダニエル・タルーロ理事(61)に向かい、米経済を支えるFRBのトップとして、職務に邁進(まいしん)することを誓った。

 大統領以上の影響力

 昨年(2013年)12月に創設100年を迎えたFRBを祝うように、初の女性議長が誕生した。米国と世界の経済を左右し、ときに大統領以上の影響力を持つとされる巨大組織FRBのトップとして、イエレン氏が担う使命と寄せられる期待は大きい。しかも量的金融緩和の縮小という金融政策の転換点を迎え、そのかじ取りに注目が集まっている。

 イエレン氏は高校までニューヨーク州ブルックリンで育った生粋のニューヨーカーだ。貧しい労働者も少なくないブルックリンで、開業医だった父は治療費がほとんど払えない患者も分け隔てなく、熱心に診察して回っていた。その父の背中を見て育ったことが、イエレン氏が経済学を志す原点であり、今もイエレン氏が雇用問題や労働市場に力点を置くことにつながっている。

 20代半ばでハーバード大助教授となり、1985年にカリフォルニア大教授に就任。FRB議長の座を争ったローレンス・サマーズ元財務長官(59)に劣らず、イエレン氏も一流の経済学者である。94年にFRB理事、97年にはクリントン政権下で大統領経済諮問委員会の委員長に就任し、ワシントンの政官界で人脈を広げた。

 正念場の量的緩和縮小

 今のFRBは議長が主張を押し通さず合議を重んじるとされるが、温厚なイエレン氏も相手の話に耳を傾け、議論の集約を目指すタイプ。ただ、資料やデータを駆使しながら自説を展開する論理派でもあり、イエレン氏の友人で元FRB副議長のアラン・ブラインダー氏(68)は「一貫して優れた判断力を発揮できる。まさにFRB議長に必要な能力だ」とその実力を買う。

 未曽有の金融危機への対応に追われたベン・バーナンキ前議長(60)と違い、米経済が緩やかな回復局面にある中で就任することは、イエレン氏にとってラッキーといえる。

 だが、バーナンキ氏が道筋をつけた量的金融緩和の縮小は、これからが正念場。さっそく、就任直前の1月下旬に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、イエレン氏は試練に立たされた。

 米経済の回復をよりどころとしてFRBは一段の緩和縮小を決めたが、直後に金融市場が動揺。量的緩和縮小に伴い、新興国から投資マネーの引き揚げが加速することへの懸念が広がったためだ。ただでさえ、金融市場はアルゼンチンなど新興国の通貨下落をきっかけに不安定なだけに、FRBも批判の矢面に立たされた。

 性急な金融引き締めに慎重なハト派(緩和派)とされるイエレン氏だが、今年からFOMCの新メンバーになった地区連銀総裁などにはタカ派(引き締め派)も増え、今後は議長として論議の集約に気を遣う場面が増えそうだ。11日には下院で金融政策報告を行う予定で、発言に市場の関心が集まっている。

 夫はノーベル賞受賞者

 全米の首都ワシントンにFRB、そして12地区に連邦準備銀行が設置されたのが1913年。イエレン氏もそうであるようにFRBの副議長や地区連銀総裁を女性が務めることはあったが、FRBのトップを女性が担うのは初めてだ。

 女性で初のFRB議長となることに本人はことさら多くを語らないが、それでも講演で、「中央銀行で働く女性は増えており、高いポストに就く人も多くなるだろう」と“決意”をにじませたことがある。

 夫は同じ経済学者でノーベル賞受賞者のジョージ・アカロフ氏(73)。仕事でも互いの知的好奇心を刺激し合うおしどり夫婦には、切手収集という共通の趣味もある。米メディアによると、昨年(2013年)時点で最大5万ドル相当のコレクションを保有しているというから驚きだ。

 FRB議長に就任すれば、国際会議の出席など激務と多忙な日々が待ち受ける。掘り出し物を探して回る楽しみは少しお預けとなるかもしれない。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS (動画))

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