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原油輸出解禁論に動く政府と議会

 「米国の原油生産に問題が起きる前に行動を起こさねばならない。今がその時だ」

 さすが寒さに強いアラスカ州選出のベテラン議員というべきか。米国が記録的な寒波に震え上がった1月7日、朝早い講演にもかかわらず、リサ・マカウスキ上院議員(56)はその熱弁で聴衆を引きこんでいった。

 その手には自身が満を持してその日発表したばかりのエネルギー政策に関する最新の報告提言書が握られていた。

 シェール革命で生産急増

 米国で国産原油の輸出解禁論議が高まっている。「シェール革命」にわく米国では原油生産が急増。数年以内に世界最大の産油国に躍り出る見通しとなる中、石油ショックを受けて続けてきた事実上の輸出禁止措置について、産業界などから解禁を求める声が広がり、政府や議会も検討に着手した。

 その火付け役がマカウスキ氏だ。上院エネルギー天然資源委員会に所属し、議会でもエネルギー問題の第一人者として知られるマカウスキ氏は、野党共和党の重鎮でありながら、オバマ政権のエネルギー政策にも強い影響力を誇る。ロビー活動を行う各国の政府高官や業界関係者の間でもつとに有名で、その存在感たるや、「政府よりもまずマカウスキ氏を口説かなければ話が前に進まない」(日本の電力業界関係者)ほどだ。

 そのマカウスキ氏は7日、米国産原油の輸出禁止措置を解除するようオバマ政権に要請した。大手シンクタンクのブルッキングス研究所で講演したマカウスキ氏は、原油の禁輸政策を「非効率で原油の供給を妨げている」と問題視し、原油価格や米国民の雇用に悪影響が生じる事態を避けねばならないと強調。輸出を解禁すれば生産量がさらに増え、国際価格も下がると指摘した。さらにマカウスキ氏は、政府がもしも自主的に行動を起こさなければ、「(輸出解禁に向けた)法案を提出する用意がある」とも表明した。

 6年以内にサウジを抜く

 米国は1970年代の石油ショックを受け、未精製原油については75年から米企業に輸出を原則として禁じてきた。原油を精製したガソリンやディーゼルの輸出は認められるが、海外に原油を売却する場合の大半に大統領の規制免除を義務づけることで、原油輸出は事実上禁止される格好となっている。

 だがそうした状況に変化を迫っているのが、シェール革命だ。地中の頁岩(けつがん、シェール)と呼ばれる硬い岩盤に含まれるシェールオイルやシェールガスの開発は従来難しかったが、高圧水で岩盤に亀裂を入れて取り出す「水圧破砕(フラッキング)」技術が確立されたことで採掘コストが下がり、開発しやすくなった。米国は岩盤の質に合わせて水に混ぜる化学物質の量を調整するなど、効率的な採掘ノウハウも持ち合わせる。

 国際エネルギー機関(IEA)によると、米国は2020年までにサウジアラビアを抜き、最大の産油国に躍り出る見通しだ。米政府の予測でも、15年には原油生産の日量が1972年以来の高水準に達するとみられている。

 LNGはすでに制限緩和

 業界団体の米石油協会(API)も原油輸出解禁を政府と議会に求める方針を表明済みで、「現在の生産水準をみれば、(禁輸)政策が時代遅れになったことは否定できない」と強調している。エネルギー省のアーネスト・モニツ長官(69)も先月(2013年12月)、輸出再開を議会と議論する機が熟したとの見方を示している。

 米国産原油の輸出が解禁されれば、「中国やインドなど高成長に伴いエネルギー需要が拡大している新興国が食指を動かす」(米電力業界関係者)とみられ、原発の稼働停止に直面する日本のエネルギー確保につながる可能性もある。

 米政府はすでに液化天然ガス(LNG)についても輸出制限の緩和に踏み切り、昨年(2013年)5月には中部電力や大阪ガスへの対日輸出事業が初めて認可された。ただ、米国が輸出を想定しているのは生産がだぶつく軽質原油で、重質原油は当面中東など海外からの輸入に頼る見込み。資源政策の相次ぐ転換で、エネルギー安全保障や市場への影響を少なからず懸念する声も議会の一部にみられる。

 オバマ政権と議会は内外の反応を見極めながら慎重に輸出の是非を判断するとみられるが、シェール革命を受け、原油解禁を求める動きが加速しそうだ。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS

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