ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
トレンド
守破離のコースが情報編集力をつくる ぼくの夢を体現するイシス編集学校 松岡正剛
更新
【BOOKWARE】編集工学研究所所長、イシス編集学校校長の松岡正剛さん=9月14日、東京都千代田区の「丸善丸の内店内の松丸本舗」(大山実撮影)
佐川美術館の中にある楽吉左衛門の茶室には「守破離」の額がかかっている。心に滲みる書だ。茶の湯に「守・破・離」を導入したのは江戸千家の川上不白だった。武道の心得を採り入れたのだ。不白は「師が守の型を教え、弟子がこれを破り、両者がこれを離れてあらたに合わせあう」ということを理想とした。
2000年6月、ぼくはネット上にイシス編集学校を開設した。情報編集術の型を教え、その応用をさまざまに習得してもらう学校だ。このとき不白にヒントを得て、基本コースを「守」、応用コースを「破」、校長直伝コースを「離」と呼ぶことにした。モットーは「型を守って型に就き、型を破って型へ出て、型を離れて型を生む」というものだ。
守破離の各コースにはそれぞれ16週間をあてた。参加者は約10人ずつがネット上の教室に入り、次々に配信されるユニークなお題に応える。ぼくが腕にヨリをかけてつくったお題だ。それに回答すると、教室付きの師範代や師範たちの丁寧で軽妙な指南が受けられて、次に進める。そんな仕組みにした。真っ先に申し込んできたのは当時のホンダの常務さんだった。その後、32期で893教室が運営され、3万人の受講者がとびきりの編集力を身につけていった。
この学校が評判なのは、「守」と「破」を了えると、誰もがイシス花伝所に入って師範代の資格がとれるところにある。教える者と学ぶ者が短期で交じりあえるのだ。こうして生まれた師範代は471名に達している。師範代から師範になった者も少なくない。そこには大学教授もプログラマーも、技術者も主婦も、経営者もミュージシャンもいる。みんなが知り合いになる。
イシスはISISと綴る。「インタラクティブシステム」と「インタースコア」という二つのISを掛け合わせた言葉だ。再生の女神イシスも象徴している。というのも、ぼくが考えている編集力は再生力なのである。情報や知識や出来事を、より充実した応用可能な解釈にするため、そこに従事する者たちが“相互の再生”をめざして編集的可能性を広げていくことなのだ。
世阿弥の序破急も、不白の守破離も「型」を学ぶことを重視した。情報編集力も型から入るのがいい。ただし序破急と守破離はちょっと違うものである。千葉周作は『剣法秘訣』で、序破急は拍子を感じることだが、守破離は筋目が分かることをいうと言った。いまの日本、筋目が欠けている。
川上不白は、16歳で如心斎千宗左に入門してたちまち高弟になり、当時の町人文化にふさわしい茶の湯の確立を申し渡された。そこで1750年に江戸に下向して、上野池之端に江戸千家をおこすと心技体の稽古のための七事式をまとめ、ここに守破離の思想を導入した。本書はその不白を中心に、能楽師や禅家の思想、針ケ谷夕雲や千葉周作などの武道の思想などをに言及しながら、日本人にとって守破離こそ学習の王道になることを説いた。
守破離の3段階は、守において「型」を学び、そこから破や離に向かって自在な編集力を身につけるためのコースウェアであり、その心得である。では「型」とは何なのか。日本の研究者で最も早く、最も深く「型」を研究したのは源了圓だった。源は型には体や技によって形成するものと、文化や様式とともに育まれるものとがあって、日本語の「型」にはその両方の意味が含まれると見た。型はパターン、テンプレート、モデルなどであり、また文化の動向なのである。
イシス編集学校では学習したりレッスンすることを「稽古」と呼んでいる。この言葉はもともと「古(いにしえ)を稽(かんが)える」と読む。つまり「型」に学ぶことが本来の稽古なのだ。本書は、日本人の教育や学習にもう一度「型の稽古」を復活すべきだと説いた本。中森さんは観世流の能楽師で、長年鎌倉や湘南に能を普及することに尽力する一方、電子映像と能を組み合わせる実験などにも取り組んでこられた。実は薪能の普及者なのである。
ぼくはこのところ「編集する」と「日本する」をつなげようと試みてきた。まさに日本を編集工学するべきだと考えているからだ。このとき「型」をどのように実際の編集力に生かすかということが重要になる。本書は「縞」の話から始めて踊りや話芸などに話を広げ、「間」「粋」「道」がいずれも型にもとづいていることを述べ、それらはすべて「守破離」として組み立てられるべきだろうという結論を導いている。「一緒の守、一期の破、一生の離」なのである。(編集工学研究所所長・イシス編集学校校長 松岡正剛/SANKEI EXPRESS (動画))
イシス編集学校 基本コース[守]の春講座は4/21から開講。松岡正剛の「方法」の38の型を編集稽古。200名限定で、定員になり次第、締切り。(http://es.isis.ne.jp)