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財政危機に直面するプエルトリコ

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財政危機に直面するプエルトリコ

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 中世の大航海時代。スペインのイサベル女王の支援を得て大西洋を渡った探検家コロンブスは、1493年11月にカリブ海の大アンティル諸島の一角に浮かぶ美しい島にたどり着いた。あまりの絶景にコロンブスが感嘆したスペイン語で「豊かな港」を意味する「プエルトリコ」が島の名前となった。

 カリブ海の保養地として世界的にも有名な米自治領プエルトリコが財政破綻の危機に直面している。産業の低迷で長く続いた不況により債務が膨張し、公債の信用も暴落。市場や米メディアでは「第2のデトロイト」と懸念する声が上がり、金融市場にも不安が広がっている。

 「第2のデトロイト」

 コロンブスによって発見されたプエルトリコの歴史をもう少しおさらいすると、1898年の米国とスペインの米西戦争の結果、スペインから米国の植民地に変わり、1952年には米自治領に昇格した。やがてプエルトリコは、コロンブスも感嘆した自然の美しさを最大の武器とし、全米屈指の、いや世界でも人気のリゾート地として発展を遂げることになる。

 ただ、しばらく繁栄を謳歌したプエルトリコだが、基幹産業の観光業にあぐらをかき続け、近年は様子が違ってきていた。まず競合する他のリゾート地に客足を奪われ、観光客がじり貧になり、経済活性化の柱としてIT企業の誘致を図ったが、思うように進んでいない。失業率は昨年(2013年)12月で15.4%と高止まりし、緩やかな景気回復が続く本土とは雲泥の差がある。

 債務残高は約700億ドル(約7兆1600億円)に上り、米史上最大の自治体破綻となったミシガン州デトロイト市の負債180億ドル(約1兆8400億円)よりも格段に多い水準だ。

 相次ぐ自治体債の格下げ

 そこに追い打ちをかけるように、大手格付け会社が相次いでプエルトリコの自治体債を投資不適格のジャンク級に格下げした。米格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は今月(2月)4日、プエルトリコの格付けを、「BBBマイナス」から投機的水準の「BBプラス」に1段階引き下げた。欧州系格付け会社フィッチ・レーティングスや米ムーディーズ・インベスターズ・サービスも、投機的水準への格下げで足並みをそろえた。

 S&Pは、プエルトリコの資金調達の手段が限られ、「中期的に流動性の確保が厳しい状況」と指摘。一段の格下げもありうると懸念。フィッチは膨大な公的債務などを格下げの理由に挙げ、見通しも「ネガティブ(弱含み)」で一段の格下げもあり得ると警告している。

 プエルトリコ政府は格下げに対し、「失望した」と反発。さらにプエルトリコ政府も手をこまねいているわけではなく、リストラに着手している。昨年(2013年)末に公立学校の年金給付を削減する社会保障改革を断行。米投資銀行やヘッジファンドと接触し、近く大規模な債券の発行も検討中と伝えられている。

 ただ、財政緊縮には公務員などの反発が強く、投資家の信用が急落する中で緊急の債券発行に踏み切っても、思うように資金が調達できるか不透明だ。

 破綻なら世界経済に激震

 最悪の場合は財政破綻が現実味を帯びるが、連邦破産法の適用で債務圧縮が可能なデトロイトと違い、自治領のプエルトリコは破産申請はできない。そのため、いざ破綻となっても、「債務再編は複雑さをはらむ可能性が高い」(英紙フィナンシャル・タイムズ)とされる。

 ホワイトハウスの報道担当者がロイター通信に対して先月(1月)22日、プエルトリコの状況は注視しているが、「連邦政府の大規模支援は検討していない」と述べたことも、市場に不安を広げた格好だ。

 金融市場も、プエルトリコの動向を息をひそめて見守っている。プエルトリコの自治体債は金利収入に対する所得税が免税となるため投資家に人気が高く、ファンドなど金融商品にも多く組み込まれている。新興国の信用不安から金融市場では昨今、為替相場の混乱や世界的な株安が進んでおり、プエルトリコの財政危機は世界経済を一層動揺させかねないためだ。

 大都市を中心に緩やかな景気回復が続く米国だが、回復から取り残された地方都市では財政危機が進行しており、「破綻ドミノ」が危ぶまれている。プエルトリコの財政危機の行方次第では、全米と世界に激震が走ることになりそうだ。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS (動画))

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