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【逍遥の児】戦国武者の合戦「首取り」
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赤い基調のポスター。異彩を放つ。甲冑(かっちゅう)を身につけた武者の群れ。馬にまたがる。槍(やり)と刀。戦う。ものすごい形相。作品名「首取り」。
実物を見たい。「村松秀太郎展」(3月16日まで)が開かれている市川市芳澤ガーデンギャラリー(千葉県市川市真間)に電話した。知り合いの学芸員、田所久仁子さんに取材を申し込んだ。彼女はそっといった。「いま、村松先生ご本人がギャラリーにいらっしゃいますよ」
どんな画家だろう。会いたい。即、京成電車に乗った。市川真間駅で下車。急ぎ足でギャラリーに向かう。会場に赤いセーターを着た画家がいた。村松秀太郎さんだ。早速、話をうかがった。
──首取り。強烈な作品ですね。
「同じ一族の作家、村松友視(ともみ)と会って、先祖と戦国時代について熱く語り合ったことがある。その晩、生々しい合戦の夢を見た。ひらめいた」
武田勢と上杉勢が激突した川中島の合戦。夢の情景を題材に、約2年かけて仕上げたそうだ。
もうひとつの大作「千手観音」もすごい。村松さんは2000年、大阪芸術大学教授に就任した。大阪、奈良の古寺を巡った。藤井寺市に建つ葛井(ふじい)寺。千手観音像(国宝)を拝観して感動した。美しい。イメージをふくらませ、作品にした。
「観音様にはいくつもの手がある。その手で戦闘機や原爆、兵器を握りつぶさせた」
自作の千手観音をプリントしたシャツを身につけている。セーターをめくりあげ、「ほら」と見せてくれた。いつでも観音様が守ってくれるという。
日経新聞に連載された「失楽園」(渡辺淳一著)の挿絵も担当した。原画が展示されている。一点一点、説明してくれた。いとおしそうに。
さて、村松さん。生まれは静岡・清水港。ふるさとに強い愛着を持つ。
「清水港で一番えらいのは、次郎長だよ。富士山の裾野を開墾。明治になって英語塾を開いた」
激動の幕末から明治を生きた侠客(きょうかく)。村松さんは次郎長を描いたこともある。素肌は真っ赤。手にキセル。大親分は天をにらんでいた。(塩塚保/SANKEI EXPRESS)