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もっと五輪との一体化を 佐藤真海
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2014年ソチ冬季五輪会場。競技は、ロシア・ソチの市街地から約40キロ南東にある黒海沿岸の「アドレル」と、アドレルから約45キロ離れた山岳地域の会場「クラースナヤ・パリャーナ」の2カ所で実施。(C)Google
3月7日にソチ冬季パラリンピックが開幕しました。今大会の選手団は20人で、そのうちの15人が2大会目以上と経験値の高い選手で構成されています。前回バンクーバー大会のメダリストも5選手います。ただ、バンクーバーで銀メダルを獲得したアイススレッジホッケー(座位のアイスホッケー)は今回出場がかなわず、車いすカーリングも出場を逃したため団体種目がなく、20人すべてがアルペンスキー、クロスカントリー、バイアスロンの個人種目の出場になりました。
片脚でターンしながら滑降するスキー選手、マイクを装着したガイドの後ろを滑る視覚に障害のあるスキー選手、義足でのスノーボードなど、冬季パラリンピックも、高度なパフォーマンスにエキサイティングする場面にくぎ付けです。そこからは、人間の持つ可能性を感じさせてくれるパワーが伝わってきます。
「大切なのは、失ったものではなく今あるもの。そして、その可能性を最大限に引き出す生き方」。そうした素晴らしさをソチパラリンピックに出場する選手が見せてくれています。
4年に一度というのは、とても調整が難しいものです。けが、スランプ、競技環境の整備、その他いろいろなものを乗り越えて照準を合わせなければなりません。しかも、出場権を獲得するまでと本番という、2度のピークに合わせることは、簡単なことではなく、それは五輪選手と変わりません。
その中で出場切符を手にした選手たちには本番で今ある力をすべて出し切ってほしいと心から願っています。パラリンピックの選手たちも日本や海外の事前合宿地で、ソチ五輪をテレビで見ていたことと思います。戦う選手たちに感情移入し、同じような心境でその場に立つような感覚になったのではないでしょうか。パラリンピックの協議会場も五輪と同じで、より鮮明なイメージトレーニングにもなり、一気に緊張感が高まっていったと思います。
一方で、少し残念な思いもあります。ソチ五輪が閉幕したのが先月(2月)23日。間髪入れず五輪の熱もそのままに、パラリンピックが始まればどんなによかったでしょう。選手にとってももちろんですが、応援する世界中の人にとっても、パラリンピック・ムーブメントにとっても、なるべく間を空けずにパラリンピックを開催した方がいいと私は思いました。
五輪の前にパラリンピックを開催する大会だって、あっていいと思っています。もっと言えば、ソチ五輪の閉会式で、4年後の開催地である韓国・平昌へバトンを渡し、聖火が消されました。この聖火を一度消すのではなく、パラリンピックが終わるまで灯し続けることはできないのでしょうか。
2020年の東京で、五輪とパラリンピックの2つの大会が一つの祭典としてより一体となれるよう、日本でもできることはたくさんあると思います。
たとえば、一昨年(2012年)のロンドン五輪は、パラ開幕前にメダリストの銀座パレードが行われましたが、こちらも英国がそうであったように、パラリンピックの終了後に一緒にやるようになればいいなと願っています。
夏季のパラリンピックでも感じていることですが、いま、パラリンピックの世界では、大会ごとに選手のレベルがすさまじい勢いでアップしています。世界記録が次々と塗り替えられているように、選手の可能性の伸びしろが大きい競技、種目が多いのです。海外では国の支援も大きな後ろ盾になっています。
ロンドン・パラリンピックで行われたアンケートでは、選手たちの年間の自己負担額は平均144万円でした。4年前の北京大会では111万円だったので、負担は増えています。世界のトップと互角に戦っていくためには、より多くのお金と、そして時間と環境が必要になってきています。それが確保できずに、競技継続を断念してしまう選手もいます。
そうした厳しい環境の中で、日本の競技レベルは、私が初出場した04年アテネ大会はメダル獲得数が10位だったのですが、4年後の北京大会は17位、そしてロンドン大会は24位と成績は下降しています。
4月からはパラリンピックの所管が、これまでの厚生労働省から五輪と同じ文部科学省に移り、来年度予算案では選手強化費が前年度比で約2億円増えて約10億円になりました。これまでは五輪でしか設置されなかった現地拠点「マルチサポートハウス」も、今夏のアジア大会からパラリンピックの選手も利用できるようになります。
20年に向けてしっかりと選手たちのレベルを上げていくことが求められており、そのためにも、五輪と同じような練習環境を確保していくこと、そして制度や仕組みを充実させていく必要があると感じています。読者の皆さんにとって、ソチ大会がパラリンピックへの関心をますます高める機会になればと思っています。(女子走り幅跳び選手 佐藤真海(まみ)/SANKEI EXPRESS)