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ソチ五輪後の選手たち 「平昌」見据え 次なる目標へ
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2018年冬季五輪(韓国・江原道平昌郡)、2020年夏季五輪(日本・東京都) ソチでは冬季オリンピックが終わり、冬季パラリンピックが開催中だ。決して恵まれた環境にあるとはいえない日本選手の連日の活躍には、惜しみない拍手を送りたい。
一方で、五輪の主役だった選手らも、次なる一歩を踏み出している。いや、五輪の主役だけではない。ソチに縁のなかった選手も、次の目標に向かって走り始めている。
「カーママ」の愛称は、ソチ五輪カーリング日本代表の北海道銀行チームのものだ。スキップの小笠原歩(35)とサードの船山弓枝(35)がともに結婚、出産を経て復帰し、ベテランらしい冷静な試合運びで五輪ではランキング上位の国を次々食い、5位に入った。予想を上回る活躍ぶりに興奮させられた。
だが、国内で日本選手権3連覇中だったのは、中部電力である。昨年(2013年)9月、日本代表決定戦の決勝で北海道銀に敗れ、ソチはテレビ観戦だった。五輪を逃し、一時チームはバラバラになりかけたという。スキップの藤沢五月(22)は「カーリングを離れることも考えた」と話していた。
3月9日、長野・軽井沢アイスパークで行われた日本選手権最終日、中部電力は見事に北海道銀を下して4連覇を達成した。それにしても、どうしてこう、カーリングの中継には惹(ひ)きつけられるのだろう。おそらくそれは、彼女らの凝視のせいかもしれない。
ストーンの行方を追う見開かれた眼。正面から中継のカメラが追う。あれほど真剣に見開いた女性の目を、正面から受け止めたことなどないのだ。テレビ桟敷で、誰はばかることなくドギマギする機会を、カーリングが与えてくれているといえるかもしれない。
加えて、ブラシを駆使するスウィーピングの献身。一投ごとに好機とピンチが交錯する頭脳的でスリリングな展開。一喜一憂する選手の表情の変化。4年に一度の五輪開催年にばかり注目度が増す競技だが、男子も含め、もっともっと取り上げられていい。
≪悔し涙も感動の涙も 力に変えて≫
ソチ五輪で最も金メダルの期待が高かったジャンプ女子の高梨沙羅(さら、17)は、表彰台にも上れず、まさかの4位に終わった。
現地で彼女は、コーチに「メダルを見せてあげられなくてごめんね」といって泣き、帰国後は、ジャンプ男子団体の銅メダルをテレビで見て、号泣したのだという。
すでに、高梨の五輪後も始まっている。帰国後は山形で開かれた国体にテストジャンパーとして参加し、欧州へ。ルーマニアのルシュノフで行われたワールドカップ(W杯)女子個人戦第14、15戦に連勝して昨季に次ぐ個人総合2連覇を決めると、(3月)8日、オスロで開かれた第16戦でも五輪を挟む5連勝で今季13勝目をあげた。
五輪の失速が嘘のような、盤石、圧倒的な強さである。表彰台の中央でみせる、あどけなく屈託のない笑顔に、改めて五輪の重圧という残酷な魔物の大きさを思い知る。ただ高梨は、ソチの悔し涙と男子団体銅で味わった感動の涙で、過去を少しでも洗い流すことができたのではないか。本当の悔しさを晴らす舞台は、4年後の韓国・平昌(ピョンチャン)冬季五輪になるはずだ。
「レジェンド(伝説)」葛西紀明(41)も飛び続けている。ソチのラージヒルで悲願の個人メダル(銀)を獲得し、チームリーダーとして団体銅メダルも牽引(けんいん)した。2月26日、スウェーデンのファルンで行われたW杯では膝を痛めながら3位で表彰台に上がり、(3月)7日のトロンヘイム(ノルウェー)でも今季6度目の表彰台に上がった。
目標の総合優勝にこそ手は届かなかったが、世界のジャンパーがあがめる尊敬のまなざしは変わらない。葛西は次の目標を、「平昌の金」に定めている。
カーリング日本選手権決勝で中部電力に敗れたものの、北海道銀行の「カーママ」チームも、平昌に向けてスタートを切る。五輪直後で「体もメンタルも厳しかった」という日本選手権だが、そんな中で決勝に進み、宿敵と競い合った自信は次につながる。母はさらに強くなるか。こちらも見逃せない。(EX編集部/撮影:共同、AP、ロイター/SANKEI EXPRESS)