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理研、STAP細胞論文の撤回検討 3月14日に調査報告

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理研、STAP細胞論文の撤回検討 3月14日に調査報告

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理化学研究所の研究ユニットリーダー、小保方(おぼかた)晴子さん=2014年1月28日(伊藤壽一郎撮影)  理化学研究所は3月11日、画像や表現に不自然な点が相次いで指摘された新たな万能細胞「STAP細胞」の論文に関し、撤回を含めて検討していると発表した。理研として著者らに取り下げを勧告することもあり得るとしている。

 菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は11日の記者会見で、文部科学省が理研に対して調査を実施し事実を明らかにするよう求めたことを明らかにした。下村博文(しもむら・はくぶん)文科相(59)は「客観的な調査をして、再度論文を出すよう期待をしたい」と話した。理研は14日午後に調査の状況を公表する。

 理研によると、撤回には著者全員の同意が必要で、STAP論文は計14人の共著。共著者のチャールズ・バカンティ米ハーバード大教授は、米紙ウォールストリート・ジャーナル電子版に「私が持っている情報に基づけば、論文が撤回されなければならない理由は見あたらない」と語った。バカンティ氏は、理研の小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダー(30)の元指導教官で、小保方氏と10日に話したという。ハーバード大医学部の広報責任者は「疑念は精査する」とのコメントを発表し、事実関係を調査している。

 理研の加賀屋悟広報室長は11日、文科省で記者会見し「世間をお騒がせし、誠に申し訳ない」と謝罪した。この問題で理研が公式に説明するのは初めて。論文取り下げの判断は共著者の間での協議を待つとしたが、判断が出ない場合に勧告を検討するという。

 論文は、小保方氏らが英科学誌ネイチャーに発表。この論文の画像が、小保方氏の3年前の博士論文の画像と酷似するなど不自然な点があり、共著者の若山照彦・山梨大教授は「信用できなくなった」と他の著者に撤回を呼び掛けた。

 ≪「画期的発見」一転 揺らぐ信頼性≫

 どんな細胞にもなれる「万能細胞」を簡単に作る方法を発見したとして世界を驚かせたSTAP細胞の論文が、撤回の瀬戸際に立っている。画像の使い回しなどの指摘が相次ぎ、研究を主導した小保方(おぼかた)晴子氏が所属する理化学研究所は撤回を視野に対応の検討を始めた。生物学の常識を覆す「画期的発見」の発表からわずか1カ月余り。STAP細胞の存在そのものの解明はまだ時間がかかりそうだが、論文のずさんさが研究の信頼性を大きく揺るがしている。

 撤回が急浮上したのは共著者の若山照彦・山梨大教授が3月10日、他の共著者にいったん取り下げることを呼び掛けたのがきっかけだった。若山教授は、STAP細胞ができた根拠となる画像が、小保方氏が2011年の博士論文で使用した別の研究の画像とそっくりだと9日に知り決意したと説明。STAP細胞が存在するかについては「信じたい。しかし信じられなくなるほど間違いが見つかっている」と話した。若山教授は、STAP細胞の作製自体には関わっていなかったという。

 STAP細胞への疑問は、1月下旬の成果発表後、間もなく出始めた。主な指摘は、STAP細胞が胎盤に変化したことを示す画像が別の実験の画像とよく似ているほか、DNA分析の画像に加工したような跡があるとの内容だ。引用を明記せずに他人の論文の記述を引き写したことも疑われている。

 「結果を出さなければというプレッシャーから一線を越える人もいるかもしれない」と大阪大助教の男性は話す。

 実験結果の中でも特に理想に近いものは「チャンピオンデータ」と呼ばれる。研究者はそれを求め実験を繰り返し、偶然に一度だけ出た結果を選んだり、データの捏造(ねつぞう)や改竄(かいざん)などにつながったりしかねない。

 画像をくっきりさせるために、明暗を調節することもあるとされる。元理研研究員の会社員は「別の実験結果を使い回すのは次元が違い、完全にアウトだ」と指摘する。

 理研は11日、「論文の取り下げを視野に入れ検討している」との談話を発表、14日に調査の経過を説明するとした。

 STAP細胞の論文は2本あり、計14人が著者に名を連ねる。撤回には全員の同意が必要だ。

 このうち米ハーバード大教授は「撤回すべき理由は見当たらない」と発言。理研は、小保方氏らが同じ手順で再び実験に成功しており、引き続き理研や外部の研究者が再現を試みるとしている。

 小保方氏以外が成功すれば、STAP細胞の存在をめぐる疑惑は晴れ、撤回ではなく訂正で済むかもしれない。このため再現の成否が鍵になるが、結論には時間がかかることも予想され、見通しは不透明だ。

 ある幹細胞の研究者は「論文は撤回すべきだ。撤回すると、STAP細胞が本当にあったとしても学術上は消えることになり、重いが、実験をやり直して再度発表すればいい」とする。一方、中辻憲夫・京都大教授は「今回の論文はずさんだ。日本の科学や博士課程教育の評価が下がるのではないか。個人の問題にとどまらず全体に影響が広がると残念だ」と話す。

 若山教授によると、小保方氏からは「騒がせてすみません」とのメールが来たという。(SANKEI EXPRESS

 【STAP細胞のネイチャー論文について指摘された問題点】

・論文を基にSTAP(スタップ)細胞(刺激惹起性多能性獲得細胞)を独自に作ろうとしても作れない

・胎盤に変化できることを示した画像が、別の実験の画像と似ている

・DNAを分析する実験の画像で、加工したような不自然な線が見える

・実験方法を説明する文章で、ドイツの研究者の論文とほぼ同一の記述がある

・さまざまな細胞に変化したことを示す画像が、骨髄の細胞から変化したことを示す博士論文の画像と似ている

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