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科学
リケジョと科学の進歩 大和田潔
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今日は女性の節句のひな祭りです。小保方(おぼかた)晴子さん(理研発生・再生科学総合研究センター)のグループによるSTAP細胞(Stimulus-Triggered Acquisition of Pluripotency、刺激惹起性多能性獲得細胞)の報道が駆け巡りました。いったん分化した若年マウスの細胞に酸性の刺激を加えると、分化の過程がストップし、さまざまな細胞に分化できる多能性を得たというものです。
遺伝子導入の作業も必要なく、外界の刺激と一定の培養方法のみで、分化した細胞が再び多能性がある細胞になるという発見に世界中が色めきたちました。けれども、その後の世界中で行われている再現実験がうまくいかないとのこと。彼女は幸運にも、何かの糸口を見つけたのかもしれません。
若くて生き生きとした若い女性が、新しい科学発見をしようとがんばっていたことは、同業の女子の方の希望になったことでしょう。企業で金属を分析する研究職として働く若い女性も、「報道を聞いて励みになりました」とおっしゃっていました。
これまでの「科学研究者」のイメージは、人生全ての喜びを失う代わりに業績を手に入れる、といった悲壮感が漂っていました。女性らしく暮らしながら研究を続けていた小保方さんの姿にも、世間は驚きました。理系の女性たち、「リケジョ」さんたちも、そのしなやかな生き方に勇気をもらえたことでしょう。
研究は、人生の全てを捧げても成功するとは限らない厳しいものです。良い結論が出なかったとしても、研究結果は必ず何らかの意義を持ちます。
STAP細胞の研究も、多角的な検証が加えられ、iPS細胞とは異なる細胞内のメカニズムが明らかになっていくことでしょう。優秀な理系の女性たちが研究を続けられることは、国家的な財産です。家庭と仕事を両立できる環境作りが急務です。
科学の前では女性も男性も関係ありません。放射線もDNAの二重らせんも最初に気づいたのは女性科学者でした。真実を積み重ねていく粘り強さは、女性研究者の強みです。彼女たちならではの力と感性を持って挑戦できる環境づくりが、日本の科学の未来を拓いていくことでしょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)