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夢の細胞 論文に「重大過誤」 理研「STAP」中間報告 画像流用を認定
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新万能細胞「STAP(スタップ)細胞」(刺激惹起性多能性獲得細胞)の論文で疑義が呈された画像について、スクリーンを用いて調査結果を発表する石井俊輔調査委員長(手前)=2014年3月14日、東京都中央区八丁堀(宮川浩和撮影) 「論文の体をなさない」。理化学研究所の小保方(おぼかた)晴子研究ユニットリーダー(30)らが英科学誌ネイチャーに発表した新万能細胞「STAP(スタップ)細胞」の論文に不適切な画像データなど数々の疑義が寄せられている問題で、理研の野依良治(のより・りょうじ)理事長(75)らが3月14日、都内で記者会見し、論文を作成する過程に重大な過誤があったと発表した。理研の調査委員会は、故意の不正か間違いかを見極めるにはさらに調査が必要だと判断を先送りしたが、全幅の信頼を寄せていた部下を「未熟な研究者がずさんにデータを扱っていた」とも評し、理研幹部は苦り切った表情で視線を落とした。
調査委は中間報告を公表。論文の画像が小保方氏の3年前の博士論文と酷似しているとの指摘に調査委員長の石井俊輔・理研上席研究員は「同一データと判断せざるを得ない」と認めた。
会見に合わせ、小保方氏と理研発生・再生科学総合研究センター(神戸市)の笹井芳樹副センター長ら共著者3人が「混乱をもたらし、心からおわびする。適切な時期にあらためて説明する機会を設け、誠意を持って対応する」と文書で謝罪、論文取り下げに向けた作業を進めると明かした。発表時に世界の注目を集めたSTAP細胞の成果は、白紙に戻る可能性が高くなった。
中間報告は、論文に関する6点の疑問を調査し、2点はデータの取り扱いが不適切だが不正には当たらないとした。残り4点は継続して調査が必要とした。
理研によると、小保方氏は画像を切り貼りすることに「やってはいけないことという認識がなかった」と説明した。野依氏は「未熟な研究者が膨大なデータを集め、取り扱いが極めてずさんだった。責任感が乏しかった。研究者間の連携にも不備があった」と今回の事態を招いた原因を分析した。
論文の是非とは別に、問題の核心であるSTAP細胞の真偽については、竹市雅俊センター長は「STAP細胞の真偽は、第三者に検証、再現されることが唯一の手段」と述べ、検証を外部の研究者にゆだねる考えを示した。これまで、理研は「論文いかんにかかわらず(STAP作製の)成果の根幹は揺るがない」としていたが「調査前の楽観的な見方だった」(川合真紀理事)と打ち消した。
STAP細胞に関わる論文は、1月末にネイチャーに掲載された2本で計14人の共著。取り下げには原則的に著者全員の同意が必要で、今後チャールズ・バカンティ米ハーバード大教授らの同意を得る方針だ。
1月28日に行われた理研によるSTAP細胞作製の発表は、ノーベル賞の対象となった多能性幹細胞「iPS細胞」を多分に意識し、「動物発生の常識を覆す」とうたう大がかりなものだった。一方、論文の筆頭著者の小保方氏が30歳の女性であることに焦点を当てた報道も過熱した。科学と社会の問題に詳しい榎木英介近畿大講師は「発表側が必死に売り込もうとして、前のめりの広報になったのではないか」と話す。
そもそも画像の流用など、論文としてありえないもので、なぜこのような論文が許されたのか。理研が身内に甘く、チェック機能が働いていなかったと指摘されても仕方あるまい。
理研関係者によると、最近の小保方氏は「研究ができるような精神状態ではなく、特に今週はじめから状態がよくない」という。(SANKEI EXPRESS)