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GM女性CEO、早くも正念場 リコール問題、当局は刑事責任も視野

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GM女性CEO、早くも正念場 リコール問題、当局は刑事責任も視野

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 【アメリカを読む】

 「死亡事故を起こしてしまったことを大変申し訳なく思う」

 沈痛な面持ちで言葉を選びながら話す姿からは、自動車業界のベテラン記者相手にも歯にきぬ着せず語るいつもの威勢の良さは影を潜めていた。大量リコール(回収・無償修理)問題を受け、米メディアなどのラウンドテーブルで3月18日に取材に応じたゼネラル・モーターズ(GM)最高経営責任者(CEO)のメアリー・バーラ氏(52)は、品質管理の強化に取り組む姿勢を強調した。

 大量リコールが発覚

 自動車大手では世界初の女性トップに今年1月就任したばかりのバーラ氏が、早くも大きな正念場を迎えている。就任前にGMが数年にわたって販売していた乗用車をめぐり、死亡事故も招いた大量リコールが発覚。やはりかつて大問題になったトヨタ自動車のリコールに匹敵する一大不祥事に発展しつつある。

 問題のリコールの対象となっているのは2002~07年型の一部車種で、計約162万台にも上る。点火スイッチの欠陥により走行中にエンジンが停止したり、衝突時にエアバッグが正しく作動しない恐れなどが指摘され、こうした不具合が原因で12人の死亡事故も発生した。

 さらに、GMは開発段階から不具合を把握していたことが分かった。GMは当初、04年に初めて不具合が判明したと説明していたが、米道路交通安全局(NHTSA)に提出した追加資料によると、詳しい社内調査の結果、01年に不具合の報告を受けていたことが明らかになったという。不具合の対策が不十分なまま車が販売されていた可能性が出てきたことで、GMへの風当たりが強まっている。

 もっとも、リコールが表面化してからのバーラ氏の行動は素早かった。社内に「迅速な問題解決に向けた社内調査の加速」を指示し、その調査の結果、17日には北米を中心に乗用車など新たに約175万台をリコールし、関連費用で1~3月期に約3億ドルを計上すると発表した。今回問題になっている大量リコールとは直接関係なく、事故による死傷者の報告もないが、新たな大量リコールも辞さずに問題を洗い出すことで、早期に事態を収拾したい構えだ。

 当局は刑事責任も視野

 バーラ氏は(3月)13日、日本の主要メディアで初めて産経新聞のインタビューに書面で応じ、本国米国や成長著しい中国を中心に世界で新車攻勢をかけるとする一方で、「新車は欠陥がないことが重要で、われわれには高品質の車を顧客に届ける責務がある」と述べ、品質管理の強化に取り組む姿勢を示した。

 バーラ氏は自動車安全担当の副社長のポストも新設し、ジェフ・ボイヤー氏(58)を任命した。ボイヤー氏は自動車の安全性能の検証やリコール実施後を含めた販売後の安全対策などを担う。

 ただ、GMのリコール問題をめぐっては、当局や議会が厳しく追及する姿勢をみせている。NHTSAがいち早く調査に乗り出したほか、司法省もGMが当局への情報開示を長期間怠ったことが被害を拡大させた可能性もあるとして、刑事責任を問うことも視野に初期調査を始めた。

 下院エネルギー・商業委員会はリコール問題で公聴会を4月1日に開くことを決めた。フレッド・アプトン委員長(60)=共和党=は「安全問題についてGMと当局が何を把握しているかを知る上で、重要な公聴会になる」と手ぐすねを引いている。

 苦いトヨタの記憶

 多くの米国民にはいまなお鮮明な「苦い記憶」がある。09~10年にトヨタが「意図せぬ急加速」を訴えるユーザーの苦情をきっかけにやはり大規模リコールを起こし、米国内で築かれつつあった日本車の「品質神話」が危機に陥ったからだ。そのトヨタは長くリコール問題の影響に苦しんだが、今月(3月)ようやく、情報開示が不徹底だったことを認めて当局と和解合意した。

 公聴会にはバーラCEOが出席し、社内調査や再発防止策について説明する予定。リコールを招いた点火スイッチの不具合をめぐり、GMの対応や組織的な隠蔽(いんぺい)がなかったかどうかについて突っ込んだ質疑が交わされるとみられる。

 バーラ氏が無難に切り抜けられれば、事態の早期収拾へ前進を図れるが、逆に回答に詰まったり、矛盾を突かれるような場面がもしあれば、GMへの不信と不安は一層強まる恐れもある。(ワシントン支局 柿内公輔(かきうち・こうすけ)/SANKEI EXPRESS

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