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台湾学生デモ 総統府前に10万人 戒厳令解除後3度目、過去の学生運動受け継ぐ

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台湾学生デモ 総統府前に10万人 戒厳令解除後3度目、過去の学生運動受け継ぐ

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台湾・台北市の総統府、立法院(国会に総統)  台湾が中国と結んだ「サービス貿易協定」に反対する台湾の学生らが立法院(国会に相当)議場を占拠している問題で、学生らが全土に呼びかけた大規模な抗議デモが3月30日、台北の総統府前の大通りで行われた。警察当局によると、10万人以上が参加した。

 「弱小産業の切り捨てにつながる」とサービス貿易協定に反対している学生らは、協定は事前協議を経ていない「黒箱(密室)協定」などと批判。デモ参加者の多くは黒色のシャツ姿で臨んだ。最大野党、民主進歩党の幹部らも姿を見せ、反対運動の象徴となっているヒマワリの花を手に「民主主義を守れ」「サービス貿易協定反対」と連呼した。南部の台南からバスで駆けつけたという女子大学生(21)は「議会での慎重な審議を認めないのはおかしい」と委員会審議を打ち切った与党、中国国民党を批判した。

 一部学生が(3月)23日夜に行政院(内閣)庁舎に突入した際は強制排除で多数の負傷者が出たため、当局はデモを「理性的、平和的」に行うよう呼びかけつつ、不測の事態に備え警察官数千人を投入。総統府周辺では要所をバリケードで固めた。

 一方、協定承認をめざす国民党関係者も、台北市内でデモを行い「議場を返せ」と訴えた。馬英九総統(63)は29日夜の記者会見で、改めて協定撤回を拒否したが、今後の中台協定を監視する制度については「(5月末の立法院の)会期終了前の法制化を支持する」と学生らの要求に一部応じる姿勢を示した。だが、占拠を続ける学生らは不十分だとしており、着地点は見えていない。(台北 吉村剛史/SANKEI EXPRESS

 ≪戒厳令解除後3度目、過去の学生運動受け継ぐ≫

 台湾の総統府前で行われた大規模デモで、中核となったのは、3月18日から立法院を占拠している台湾大学などで組織された野党色の強い学生運動だった。1987年の戒厳令解除後、台湾での学生運動は今回で3度目。いずれも草花の名を掲げている。中国国民党政権による内政運営や中台関係への影響が注目される。

 シンボルの花から「ヒマワリ学生運動」(太陽花学運)と銘打った今回は、台湾大学大学院生の林飛帆氏らが指導。行政院突入で逮捕者を出した後も馬英九総統との対話を拒み、3月30日のデモまで学生の動員態勢を維持した。

 台湾では「世界最長」とされた1949年から87年までの戒厳令下で、学生運動を含む当局批判の街頭活動がほぼ全面的に規制されてきた。違反したケースでは憲兵隊による鎮圧や、首謀者の軍法会議での処罰が80年代初めまで繰り返された。

 戒厳令後で最初の学生運動は、90年3月、約6000人の学生が台北中心部の当時の国民党本部周辺で繰り広げた「野ユリ学生運動」(野百合学運)だった。1週間に及んだ座り込みは、当時の国民党独裁体制を支えた「国民大会」の廃止や、国共内戦体制の根拠だった憲法臨時条項の撤廃など、本格的な政治の民主化を要求。当時の李登輝政権は、学生が求めた民主化を段階的に実行に移した。

 2度目は、2008年11月をピークとした「野イチゴ学生運動」(野草苺学運)だ。発足間もない馬英九政権に対し、対中政策や集会規制などをめぐり抗議した。今回の運動を指導する林飛帆氏らは「大学時代に参加した野イチゴ運動に啓蒙(けいもう)された」と発言。30日も当時と同じ黒服姿でのデモ参加を呼びかけるなど、これまでの学生運動を受け継ぐ姿勢を示した。(山本秀也/SANKEI EXPRESS

 ■サービス貿易協定 中国と台湾が相互にサービス分野の市場開放を目指す貿易の取り決め。昨年(2013年)6月に上海で調印された。中台が2010年に調印ずみの「経済協力枠組み協定(ECFA)」の柱のひとつ。ECFAは事実上、自由貿易協定(FTA)にあたる。すでに一部のサービス分野は先行措置として開放されているが、電子商取引や医療、旅行業など、新たに中国側が80分野、台湾側が64分野を相互に開放する。馬政権や与党・中国国民党は「台湾に有利な協定」と主張しているが、最大野党の民主進歩党は「密室協定で台湾の弱小産業に打撃が大きい」などと反発してきた。

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