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台湾の議場占拠長期化 両岸関係を左右

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台湾の議場占拠長期化 両岸関係を左右

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台湾・台北市の総統府、立法院(国会に総統)  【国際情勢分析】

 中台が相互に市場開放を促進する「サービス貿易協定」の承認に反対する台湾の学生らが立法院(国会に相当)の議場を占拠して、4月1日で丸2週間。3月30日には台北で11万人超のデモが行われ、日本や米国など各国の主要都市でも台湾人留学生らが呼応した。学生らは、馬英九総統(63)が協定撤回などの要求に応じない限り、占拠を続ける方針で、事態は長期化の様相を呈している。

 経済から政治的支配へ

 学生らの抗議の背景には、協定によって規制が緩和されれば、中国の巨大資本の参入や労働者の大量流入を招き、台湾の中小企業が打撃を受け、雇用にも影響が出るとの懸念がある。だが、懸念はそれだけにとどまらない。

 「協定は、中国の大メディアや出版業者にも大きく門戸を開く。(中略)経済的支配は政治的支配をもたらし、そこでは過去20年の間に台湾人が勝ち取った複数政党制の議会制民主主義や報道の自由はなくなるだろう」

 英紙ガーディアン(電子版、3月25日)の記事が指摘するように、政治面での中国の影響力拡大に対する警戒感も強い。

 これらの認識は広く共有されているとみられ、世論は学生らの行動におおむね同情的だ。台湾のテレビ局が(3月)24日に実施した世論調査では、協定を「撤回すべきだ」と答えた人が63%を占め、「撤回すべきでない」の18%を大きく上回った。

 これに先立つ(3月)23日、馬総統は記者会見し、マクドナルド、スターバックスなど米資本の進出が台湾企業に好影響をもたらしたと指摘し、中国資本の進出に対する懸念の払拭に努めていた。

 中国ゆえに抱く不安

 だが、野党寄りの台湾有力紙、自由時報(電子版)は馬総統の発言に反発。(3月)28日に「台湾人がなぜサービス貿易協定に反対し、マクドナルドに反対しないか」と題した社説を掲げ、協定は「経済を通じて中台統一を促進する、中国の重要な一手だ」と指摘。「台湾人は米飲食業を歓迎するし、フランスのカルフール(スーパー)も、日本の三田製麺所(つけ麺専門店)の進出もまったく懸念しない。理由は簡単だ。米、日、仏はどこも台湾の主権に対する野心がないからだ」と断じた。相手が中国ゆえに人々は不安を抱く、というわけだ。

 昨年(2013年)6月に中台が調印したサービス貿易協定は中台間の自由貿易協定(FTA)に相当する「経済協力枠組み協定(ECFA)」の一部を成す。馬総統は、承認されなければ、台湾の国際的信用や両岸関係が損なわれ、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)といった枠組みへの参加に支障が出ると訴え、懸命に理解を求めている。

 与党中国国民党寄りの台湾有力紙、聯合(れんごう)報(電子版、3月27日)は社説で、中国の影響力増大を防ぐ観点から協定の重要性を論じた。

 「TPPやRCEPに参加できなければ、台湾は域内経済や国際政治で隅に追いやられ、結果として、台湾経済の対中依存は強まり、政治面でも中国に一層無理強いされる」「(協定反対の動きは)反中国の旗を掲げて、その実、台湾に害をなすものだ」

 正念場の馬総統

 一方、中国側は、中国共産党機関紙、人民日報傘下の環球時報(電子版、3月21日)が社説で「台湾が自ら大陸市場参入を拒むのであれば、好きにさせればよい」と主張していた。だが、学生らの抗議活動が1週間を超えると、しびれを切らしたのか、国務院台湾事務弁公室の報道官が「(中台)両岸の経済協力の進展が妨害されることを誰も望まない」(3月26日の記者会見)と不快感を示した。

 対中融和路線にかじを切り、中国との経済交流を推進してきた馬総統にとっては正念場となるが、今後の両岸関係を左右しかねない問題でもあるだけに、日増しに注目度は高まっている。

 米紙ウォールストリート・ジャーナル(電子版、3月27日)の論説は、「中国以外との協定ならよいが、中国には決して譲歩できない。なぜなら、われわれは中国を恐れるからだ」との台湾人弁護士の主張を紹介し、「こうした見方が、ほどなく、馬総統の(対中)融和路線にとってかわって、台湾の政治で支配的になるだろう」と予測。その上で「そうなれば、中国の指導者は両岸関係をかつてのような危険な状態に戻す決断をするかもしれない」との見方を示した。(国際アナリスト EX/SANKEI EXPRESS

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