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「人事は違憲」 インラック首相失職 タイ憲法裁、職権乱用を認定

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「人事は違憲」 インラック首相失職 タイ憲法裁、職権乱用を認定

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 政治混乱が続くタイの憲法裁判所は5月7日、インラック首相が職権を乱用し、公務員人事への不当介入を禁じた憲法に違反したと認定した。これによりインラック氏は、この人事に直接関与した閣僚9人とともに即時失職した。選挙管理内閣は、首相代行にニワットタムロン副首相兼商業相を任命した。タイの政治混乱がさらに深刻化することは必至だ。

 職権乱用と認められたのは2011年9月、当時の国家安全保障会議事務局長を首相顧問に異動させた人事。これに伴い、インラック氏の兄で国外逃亡中のタクシン元首相の義兄が国家警察長官に就任した。最高行政裁判所は今年3月、この人事について違法判決を下していた。

 インラック氏は6日の憲法裁審理で「国家の利益のためだった」などと主張したが、退けられた。インラック氏とともに失職した閣僚はスラポン副首相兼外相やチャルーム労相ら、タクシン元首相の側近とされ政権を支えてきた実力者たちだ。

 タイでは13年10月、インラック政権がタクシン氏の復権につながる恩赦法案を強行採決しようとしたとして、野党などが抗議運動を拡大。インラック氏は13年12月、議会を解散して巻き返しを図ったが、2月に行われた下院総選挙(定数500)は反政府デモ隊の妨害により無効となった。

 選挙管理委員会は7月20日にやり直し選挙を実施する予定だが、デモ隊は再び反発している。

 ≪任期2年9カ月と2日「誇りに思う」≫

 タイ憲法裁判所による5月7日の違憲判決で、反政府デモの辞職圧力に最後まで抵抗してきたインラック首相がついに失職した。タクシン元首相派と反タクシン派との間の国家を二分する対立が一層深刻化するのは確実だ。

 「どのような地位に就こうと、国民のために働き続ける」

 インラック氏は失職後に行った記者会見に灰色のスーツと桃色のスカーフ姿で臨み、淡々とコメントした。タイ初の女性首相としての2年9カ月と2日の任期について、「誇りに思う」とも述べた。

 憲法裁判決では公職追放を免れたインラック氏だが、ほかにも国家汚職追放委員会が、コメの買い上げ制度をめぐり8日にも告発を検討しており、その政治生命は危機的状況にある。

 政権与党のタイ貢献党は憲法裁判決について、「政権の力を奪おうという陰謀だ」との声明を発表。支持者に平和的デモを呼びかけ、7月20日に予定されるやり直し総選挙で形勢逆転を狙う。

 タクシン氏の側近で、インラック氏とともに失職したスラポン副首相兼外相は判決を前に「違憲となれば、政府支持派の集会が暴力に発展する」と警告するなど、死傷者を伴う衝突の再発も懸念される。

 反政府デモ隊の要求は、あくまでタクシン派の影響力排除であり、内閣の一部退陣では目標達成と見なさない。選挙では集票力のあるタクシン派に勝ち目がないことから、政権が目指すやり直し選挙には直ちに応じない構え。

 デモを主導するステープ元副首相は「最後の戦い」と称した大規模なデモを計画しており、違憲判決を追い風に、「選挙前の政治改革」を引き続き求めていく構えだ。

 ただ、ステープ氏が唱える「政治改革」は、主権は全タイ人に属するという憲法3条に基づき、知識人や財界人らで構成する「人民評議会」を設立して、選挙制度改革などを推し進めるという内容で、タクシン派ばかりか、諸外国からも「異常な政治体制」(外交筋)を目指す改革だと指摘されており、実現できるかは不透明だ。(シンガポール 吉村英輝/SANKEI EXPRESS

 ■タイの政治対立 2006年9月に当時のタクシン首相がクーデターで追放されて以降、地方の貧困層中心のタクシン派と、都市部のエリート層や中間層が中心の反タクシン派が対立。反タクシン派は08年、タクシン派政権打倒を掲げバンコクの首相府や空港を占拠した。反タクシン派のアピシット政権が発足すると、今度はタクシン派が10年に繁華街を一時占拠。11年にタクシン氏の妹のインラック政権が誕生。国外逃亡中のタクシン氏帰国に道を開く恩赦法案がきっかけで反タクシン派の大規模抗議行動に発展。インラック首相は昨年(2013年)12月に下院を解散したが、反政府派の妨害で総選挙が無効となり、対立は泥沼化している。(共同)

 【タイ政治混乱の主な動き】

2013年

  11月1日  下院が国外逃亡中のタクシン元首相を対象に含む恩赦法案の先生案可決

  11月4日  最大野党民主党が恩赦法案反対のデモ

  11月25日 デモ隊が財務省を占拠

  11月30日 デモ隊と政府支持派が衝突。死者3人

  12月9日  インラック首相が下院解散

  12月22日 20万人超が反政府集会

2014年

   1月13日 反政府派が「バンコク封鎖」

   1月21日 バンコクと周辺地域に非常事態宣言

   2月2日  総選挙、一部選挙区で実施できず

   2月18日 国家汚職追放委員会がコメ買い上げ政策で首相告発方針を決定

   3月2日  「バンコク封鎖」の拠点撤収

   3月12日 憲法裁が大型インフラ計画整備法案を違憲と判断

   3月18日 非常事態宣言解除

   3月21日 憲法裁が総選挙無効と判断

   4月30日 政府と選管がやり直し総選挙の7月20日実施で合意

   5月7日  憲法裁が首相の政府高官人事めぐり違憲判決、首相失職

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