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【Q&A】馬券脱税訴訟 外れ分も「経費」 購入頻度を考慮

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【Q&A】馬券脱税訴訟 外れ分も「経費」 購入頻度を考慮

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京都競馬場で行われた春の天皇賞。たくさんのファンが詰めかけた=2014年5月4日、京都市伏見区(岩川晋也さん撮影)  外れ馬券の購入費が必要経費に認められるかどうかをめぐり、大阪高裁は脱税事件の控訴審で1審判決を支持し外れ馬券も経費と認定しました。

 Q 事件の概要は

 A 3年間で馬券購入に28億7000万円を投じ、30億1000万円の払戻金を得た元会社員が、所得税5億7000万円を申告しなかったとして在宅起訴されました。

 Q 裁判での主張は

 A 検察側は、40年以上前の1970年に国税庁が競馬の所得を「一時所得」と分類した通達に基づき、払戻金から当たり馬券の購入代の1億3000万円だけを差し引いた28億8000万円額が元会社員の所得だと主張。これに対し、弁護側は、外れた分を含めた馬券の購入費全額が必要経費に当たると訴え、主張は真っ向から対立しました。

 Q 1審の判断は

 A 弁護側の主張を認めました。検察側が指摘する「一時所得」ではなく、外国為替証拠金取引(FX)や先物取引と同様に、給与所得や一時所得にも該当しない「雑所得」と判断し、課税額を5200万円と大幅に減額しました。」

 Q 一時所得とは

 A クイズの賞金などのように、偶然得たもうけを指します。

 Q それなのに雑所得と認められたのですか

 A はい。元会社員が特異な方法で馬券を買い続けていたからです。通達当時にはなかった競馬予想ソフトやインターネットを活用し、1日に1000万円以上かけ大量の馬券を買っていました。通常の馬券購入方法は「一時所得」に当たるものの、元会社員のように、営利目的で継続性が認められる場合は、外れ馬券分も経費に算入できる「雑所得」に相当すると判断しました。

 Q 2審判決も、外れを含む全ての馬券購入費を経費に認めましたね

 A 1審とほぼ同じ判断で、通達は行政解釈にすぎず、どの所得に当たるかは馬券購入の回数や頻度などを考慮すべきだと指摘しました。

 Q どうやって税務署が把握したのですか

 A 元会社員がインターネット掲示板に、費用の回収率を載せたためとみられます。

 Q どんなときに確定申告が必要ですか

 A 例えばサラリーマンは給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。馬券の払戻金は一時所得と判断された場合、特別控除などがあるため、当たり馬券分を引いた金額が年90万円を超えると申告義務が生じます。

 Q 競馬ファンに周知されているのですか

 A 日本中央競馬会のホームページには「確定申告を要する場合がある」と記載されていますが、十分とは言えません。最高2億円が当たる「WIN5」が始まり、ネットによる馬券購入も主流になりつつあり、周知の徹底が必要です。

 ≪広がる馬券のネット購入≫

 日本中央競馬会(JRA)によると、競馬場への入場者数は2000年度に1000万人以上いたが、13年度には609万人に減少。対照的に電話やネットで馬券を購入する割合が増え、07年ごろには利用者が300万人を突破した。

 ネットの掲示板では勝ち馬予想ソフトを利用するファン同士が、連日のように互いの“戦績”を披露。情報交換の場となっている。ただ、実際に黒字になるケースは限られており、掲示板には「そんなソフトを使ってもマイナスの時の方が実際には多い」という否定的な声も。

 ネットで購入する場合、窓口とは異なって大量に買いやすく、手軽だ。国税当局は申告の必要性を積極的に告知してこなかったが、12年には財務省に、払戻金からの源泉徴収や高額配当者の告知義務を新たに法制化するよう要請している。

 競馬ファンで作家の山野浩一さんは「安心して競馬を楽しむためにも課税対象の基準を明確にする必要があり、制度を見直す時期が来たのではないか」と指摘している。(SANKEI EXPRESS

 【一時所得と雑所得】

 ■一時所得

(定 義)偶発的に生じる所得

(具体例)クイズの賞金。福引の当選。借家人の立ち退き料など

 ■雑所得

(定 義)給与所得や不動産所得、一時所得などに当てはまらない所得

(具体低)国民年金。講演料。先物取引。外国為替証拠金取引(FX)など

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