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記憶を呼び戻し 見つめ直す 「地震のあとで-東北を思うIII」

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記憶を呼び戻し 見つめ直す 「地震のあとで-東北を思うIII」

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Chim↑Pom「気合い100連発」2011年(提供写真)。(Cc)Chim↑Pom  【アートクルーズ】

 東日本大震災から3年。震災後にアーティストたちが被災地とどう関わり、何を伝えてきたのかを振り返る特集「地震のあとで-東北を思うIII」が、6月1日まで東京国立近代美術館で開かれている。大震災で私たちは何を失い、何を取り戻さなければならないのか。風化が懸念される中、アートを見ながらもう一度考え直してみたい。

 悲しみ、絶望、怒り

 展示室では、いくつかの映像が同時に流されている。

 ある映像では、船や建物のがれきが広がる荒涼とした風景の真ん中で、約10人の若者が小さな円陣を組む。叫んでいる言葉は、「向かっていきまっしょい」「負けねゾ!」。さらには「彼女つくるぞー」「漁師かっこいい」など本音や願望とも思える叫びが延々と続く。

 震災直後の2011年5月初旬、福島県相馬市。行動派のアーティストグループ「Chim↑Pom」(チンポム)が、地元の若者と一緒に制作した「気合い100連発」。津波被害で何もかも失われた究極の環境の中で、悲しみや絶望感、やり場のない怒りを払いのけようとする若者の心境が、痛いほど伝わってくる。

 Chim↑Pomの作品はほかに、東京電力福島第1原発の事故直後の11年4月11日、原発間近の公園で、白旗に日の丸を描き、さらに放射能のマークに描き直す「REAL TIMES」も公開され、刺激的だ。

 数字が意味するもの

 対照的なのは、藤井光氏の「沿岸部風景記録」(12年8月)。福島県飯舘村の森林の風景を、淡々と大画面の映像で流す。聞こえてくるのは、鳥のさえずりやセミの声。どこまでも続く松林と下草、ツユクサのような小さな花も見え、朝の陽光がうっすらと差して、まさに日本人が安らげる風景。伝統的な日本画の屏風のようにも見えてくる。

 ところが、一瞬、画面の脇に示される数字に目がとまる。それは大気中の放射線量で、毎時10.41マイクロシーベルトと原発事故前の数十倍に達している。人間がいられない自然とは、人間にとってどういう意味をもつのか、考えずにはいられない。

 ほかにも岩手県釜石市の被災者自身が津波の襲来を写した映像を紹介したあとで、撮影者にインタビューした宮本隆司氏の作品「3.11 TSUNAMI 2011」など、記録的な作品も展示されている。

 東京国立近代美術館が、東日本大震災に関する特集を組むのは、11年5月の「東北を思う」、12年1月の「東北を思う-記憶・再生・芸術」に次いで3回目。1回目は、東北出身やゆかりの画家の作品などを展示、2回目は東北を舞台に撮影された写真などを通して、アートにおける東北の重要な位置を伝えてきたが、3回目は、アーティストの動きや足跡を振り返る。

 保坂健二朗主任研究員は、「作品を収蔵することで、今後も何度でも展示し、記憶を呼び戻すことができる」と、特集の意義を挙げる。作品には賛否が分かれるものもあるが、「あくまでもニュートラルに展示している。作品を見て、答えは鑑賞者のみなさんでさがしてほしい」と話している。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■特集「地震のあとで-東北を思うIII」 6月1日まで、東京国立近代美術館(東京都千代田区北の丸公園3の1)。一般430円、大学生130円、高校生または18歳未満、65歳以上など無料。月曜休館だが、5日は開館、7日が休館。(電)03・5777・8600。

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