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さまざまな解釈楽しむ151人の作品 「公募団体ベストセレクション 美術 2014」
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東京都美術館(東京都台東区上野公園)で、5月27日まで「公募団体ベストセレクション 美術 2014」が開かれている。3回目の今年は、主要27公募団体が選んだ151人の造形作家が6部門に163点を出展。個性あふれるアーティストの作品が一堂にそろい、自己の価値観をぶつけ合い、刺激し合う。鑑賞者は、若手の斬新な作品だけでなく、ベテラン作家が新境地を開いた作品にも出会えるかもしれない。
1回目から行われている、作家が自分の作品のテーマや作風を語る「アーティストトーク」をのぞいてみた。(5月)4日は、9人が話した。トークを聞いていると、作家によって、題材に対するアプローチの方向や方法の違いで、これほど作品が多様に変わるものかと、改めて驚く。さらには、創作上の秘密も明らかにされて、興味深かった。
茅野吉孝氏(65)=日本水彩画会=は「陽光」(水彩画)を出品した。野と低木の林だけという題材ながら、日の光や風のそよぎ、草や木のにおいまで伝わってくるようだ。水彩画とは思えない重厚さも感じられる。
茅野氏は自分の作画手法について、「あまりモチーフ(題材)を入れすぎると、それぞれが語りすぎてよくない」と、シンプルな構成を心がけていることを強調する。「ありのままの風景は描かない。いくつもの風景を頭に入れながら、画面で再構成している。そういう意味では抽象画とも言える」と説明した。
1960~70年代のアメリカ絵画に影響されて約50年、抽象画を描き続けている黒川彰夫氏(72)=二科会=は「余韻(エーゲ海)’13」(洋画)を出品。ブルーを基調に、赤や黄色、白の四角い色面がいくつも並びながら、美しいハーモニーを奏でている。
黒川氏は実際の風景をもとにし、色面を海や島々、遺跡などを思い浮かべながら描いたという。「若いころは、物の形を線で画面に入れ込んだ」というが、いまは「色面と色面の間をぼかしながら、色面それぞれの存在感を出すようにしている」と話した。
色と色とのハーモニーという点では、栗本浩二氏(45)=自由美術協会=の「陽光の前で」(洋画)も面白い。紫が赤に、黄色が緑にと、少しずつ変化する階調(グラデーション)が、不思議な世界を生み出す。「色の強さとエネルギーを残しながら、物語を表現したい」。この絵では、人間の知識の袋からしたたり落ちたものが、自然に影響を与えている姿を表現したかった。が、「鑑賞者のみなさんがいろいろな解釈をしてくれればうれしい」と、作品はあくまでも鑑賞者との関係で成立することも改めて指摘した。
さまざまな解釈ができるのは、多納三勢氏(75)=国画会=「風骨の森(BS-14)」(洋画)もそうだ。いくつかの人体らしきものがうごめくように見えるが、形も数もはっきりしない。20代後半から、人間に興味を持ち描いてきた多納氏は、認知症の介護を描いた小説「恍惚(こうこつ)の人」(有吉佐和子著)や公害病「水俣病」など、社会問題に触発されてきた経験を持つ。描法や色づかいは年々変わってきたが、愛、神、死…。人間に関わるテーマを盛り込みながら、「人間という仮の姿の裏側にあるものを描きたい」と意欲的だ。
対照的に、描かれたものは分かりやすいが、さまざまな画家のこだわり、工夫が詰め込まれているのが、金森宰司氏(64)=新制作協会=の「ライフ『タピストリーのある部屋で』」(洋画)だ。
画面の右から女性の体が斜めによぎる。タピストリーと化粧箱とテーブルの上の静物が左から斜めに交差する、計算された構図。しかも、マチエール(材質感)は、さまざまに変化する。例えばタピストリーの部分にはピンクの絵の具がローラーで施され、織物らしい毛羽だった絵肌ができあがっている。「画面が単なる塗り絵になってしまわないように、離れても、近寄っても味わえる絵にしたい」と狙いを話した。
アーティストトークは、(5月)18、24日にも午後1時から開かれる。
1926年に開館以来、公募団体とともに歩んできた東京都美術館。各団体から選ばれた作品を一挙に展示する国内唯一の展覧会の見どころについて、下倉久美学芸員は「どんな公募団体があるかや、その団体の歴史、今の状況を知ってほしい。また、公募展出品の入り口になってもらえれば」と話した。(原圭介/SANKEI EXPRESS)