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【MLB】和製右腕 米で躍動 「あと1人」再び 圧巻のダル劇場

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【MLB】和製右腕 米で躍動 「あと1人」再び 圧巻のダル劇場

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ロイヤルズの青木宣親(のりちか)を二ゴロに打ち取ったマリナーズ岩隈久志=2014年5月8日、米ワシントン州シアトル(共同)  絵になる男だ。投球フォームも立ち居振る舞いも、三振を奪っての雄たけびも、うなだれてさえも美しい一枚の絵となる。

 レンジャーズのダルビッシュ有(ゆう、27)は5月9日、本拠地のレッドソックス戦に先発し、九回2死まで強打線を無安打無得点に抑えたが、「ビッグパピー」こと主砲のオルティスに右前安打を許して降板した。ベンチへ歩くダルビッシュはさすがに悔しそうだったが、スタンドは満場の拍手で迎え入れた。

 オルティスの二遊間をゴロで抜けた安打も、極端なオルティス・シフトを敷かなければ平凡なセカンドゴロで試合終了のはずだった。

 昨年(2013年)4月、アストロズ戦でも完全試合をあと1人で逃しており、これが2回目。あのときは試合後に平静を装いながら、ツイッターに「あと1人て。。なんでやねん」とつぶやいた。今回は珍しく自ら「悔しい」と口にしたが、後に続けた言葉がまたいい。「こういうピッチングを多くやって、あと1人でできなかった世界記録を作ってレジェンド(伝説)になりたい」

 メジャーリーグで「あと1人でノーヒットノーラン」を2度経験したのは、1908、09年のビル・バーンズ(セネターズ、ホワイトソックス)、88、89年のデーブ・スティーブ(ブルージェイズ、3度)に続いてダルビッシュが3人目。長いメジャーの歴史の中で、いかに珍しい記録か分かるだろう。

 このうちスティーブは、90年のインディアンス戦でノーヒットノーランを、4度目の正直で達成した。ダルビッシュはあと1回でメジャー記録に並び、2回で新記録を作ることになる。

 ちなみにメジャーでは、ノーラン・ライアンがノーヒットノーランを7回達成しており、これが最多。3回以上の達成者にはライアンの他、サイ・ヤング、サンディ・コーファックス、ボブ・フェラー、ラリー・コーコランと、そうそうたる剛球投手が名を連ねる。野茂英雄には96、2001年に両リーグで達成という偉業がある。

 ダルビッシュも「あと1人」といわず、正規の記録でメジャーのレジェンドになってほしい。

 ≪無傷の5連勝 「これからも泥臭く」≫

 ダルビッシュの快投に「僕には無理。ああいう圧倒的な投球はできない。これからも泥臭く抑えていきます」と話したのは、ヤンキースの田中将大(まさひろ、25)だった。

 どうして田中だってすごい。メジャー1年目だが、ダルビッシュの快投と同じ日、ブルワーズ戦では七回途中まで2失点で無傷の5連勝。3勝のダルビッシュに先行し、楽天時代からの日米通算レギュラーシーズンの連勝記録も「33」に伸ばした。

 ダルビッシュと田中。私的にも交流がある2人の足跡は似ている。大阪府羽曳野市出身のダルビッシュは仙台の東北高に進み、北海道日本ハムを経て大リーグへ。兵庫県伊丹市出身の田中は、北海道の駒大苫小牧高から東北楽天を経てヤンキース入りした。関西から東北、北海道を経て米国へ。そこにあるのは、野球だけを見つめて早々に独り立ちした野球少年の道程だ。

 関西生まれといえば、いまやメジャー随一のストッパー、レッドソックスの上原浩治(39)は大阪府寝屋川市出身。ヤンキースのエース黒田博樹(39)、大先輩の野茂英雄も大阪市出身だった。

 今季は右手中指のけがで出遅れていたマリナーズの岩隈久志(33)も(5月)8日のロイヤルズ戦に先発し、青木宣親(のりちか、32)には1安打を許したものの、八回まで三塁を許さない完璧な投球で今季2勝目を挙げた。同じア・リーグ中地区の相手には48回3分の2という驚異的な連続無失点記録も続行中だ。

 長く故障と手術後のリハビリに苦しんできたメッツの松坂大輔(33)もようやくメジャーのマウンドに帰ってきた。中継ぎで実績を重ねながら、あくまで先発完投型への本格復帰を目指している。

 ここまで名を挙げた投手はなぜか全員、右の本格派である。野茂やマリナーズでクローザーを務めた佐々木主浩(かずひろ、46)も含めて、すべて右腕で上からの速球があり、勝負球は落ちる速い変化球だ。

 野茂や佐々木のフォークボール。ダルビッシュや黒田、上原、田中のスプリットフィンガードファストボール。松坂のジャイロ。岩隈のシンカー。メジャーのパワーヒッターがきりきり舞いする姿を早朝の中継で見ることができるのは、なんとも気分がいい。和製右腕の躍動で日本の日常に活力を与えてもらいたい。(EX編集部/撮影:AP、共同/SANKEI EXPRESS

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