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【相川梨絵のバヌアツ通信】明治神宮との意外なご縁
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昭憲皇太后のお顔がプリントされたTシャツを紹介する相川梨絵さん(左)=バヌアツ(相川梨絵さん提供) 先日、バヌアツ人と日本人カップルに元気な男の子が誕生しました。2人が出会ったのはバヌアツですが、日本で出産し、当分日本で生活するそうです。たまたま、一時帰国していたので、お宮参りに招待してもらいました。久々の再会とベビーちゃんに会うのを楽しみにしていたのですが、体調不良のため、泣く泣く欠席。すっかり、体がバヌアツ仕様になってしまったようで、帰国中、ほとんど風邪をひいて過ごすはめになってしまいました。トホホ。
さて、彼らが、お宮参りの場所に選んだのは、明治神宮。実は、この明治神宮とバヌアツ、意外なご縁があるのです。
去年、明治神宮の方がバヌアツへやってきました。その目的は、昭憲皇太后基金がどのように使われているを調査するためでした。昭憲皇太后基金? と耳慣れない方もいると思います。私も知りませんでした。明治神宮にまつられている、明治天皇とその妃、昭憲皇太后。彼女が生前、赤十字にご寄付したお金が元手になっている基金です。
この基金の画期的なところは、平時の救護事業を奨励するために使われること。もともと赤十字の活動は戦時の救護活動が中心。これを戦争以外で使うというのは、斬新で、今日の開発事業の先駆けといわれています。実は、この基金の一部がバヌアツの赤十字に使われています。
プロジェクトを企画し、基金に応募したのは、バヌアツ赤十字で働くグザビエ・ワット氏。彼は、仕事もしないでふらふらしている若者たちに経験の場を与えたいと教育プロジェクトを考えました。サイクローンなどの自然災害時の避難の仕方や、めまいや心臓発作、ぎっくり腰など10種類のけがや病気時の対策を彼自身が実演を交えて教えて回りました。
講習が行われたのは首都があるエファテ島の10の村。半年間のプロジェクトで、のべ400人が参加し、参加者も熱心で大成功でした。プロジェクトは5日間。避難の仕方をまとめたポスターを彼自身が作ったり、心臓マッサージの仕方を実際に教えたりしました。その時にかかった印刷や20体のマネキンなどに基金のお金が使われました。
そして、この5日間のプロジェクトを休まず、すべて参加した人に卒業の証として、昭憲皇太后のお顔がプリントされたTシャツをプレゼントしました。このTシャツがなかなかかっこいいのです。真ん中に大きく「エンプレス ショーケン」の文字。これも、彼のアイデア。継続が苦手?なバヌアツ人をTシャツで釣るなんてナイスアイデア! と思いましたが、いやいや、彼に訳を聞くと、「この基金のおかげでプロジェクトができたことを人々が忘れないように」とのこと。何ともうれしい言葉ではないですか。少し、“援助慣れ”してしまった感があるバヌアツ人から、こんなにも感謝に満ちた言葉を聞くことができて心がほっこり温かくなりました。
さらに、実際にこのプロジェクトはバヌアツの若者たちに利益をもたらしていることもまたうれしい限りです。ふらふらしていた若者が、このプロジェクトの卒業証明が認められ、観光専門学校の奨学金を得たり、警察官になった人もいるそうです。
バヌアツにいなければ、多分知ることがなかった日本が誇るべき1つの基金。実は、明治神宮のご社殿の手前に、赤十字マークが刻まれた「昭憲皇太后基金」募金箱があるのだそうです。知らなかったー。灯台下暗し! 明治神宮で募金箱を見かけたら、ちらっとバヌアツのことを思いだして頂けたら幸いです。(バヌアツ親善大使、フリーアナウンサー 相川梨絵/SANKEI EXPRESS)
ブログ「相川梨絵のシャララーン劇場」でもバヌアツ生活を公開中( ameblo.jp/aikawa-rie/)。また、相川さんがリポーターを務めるケーブルテレビの番組 「バヌアツへいこう」の映像がユーチューブ(www. youtube.com/watch?v=HKwn-VV7Hys)で楽しめます。