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さよなら国立競技場 「遺産」全国へ 7月から解体作業
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完成後まもない国立競技場(手前)=1959年1月31日、東京都新宿区(共同) 2020年東京五輪・パラリンピックのメーンスタジアムへの建て替えのため、国立競技場(東京都新宿区)の解体工事が7月から始まる。1958年に完成し、64年の前回東京五輪の主会場として、また、数々の名勝負やイベントの舞台となった聖地・国立。その芝やスタンドのシートはレガシー(遺産)として、全国各地の施設に引き継がれることになりそうだ。
国立競技場を管理する日本スポーツ振興センター(JSC)は解体にあたって、不用となる備品の譲渡先を公募。備品にはシートや大型のゴミ箱、テーブルや椅子が含まれ、JSCは「多くの方にレガシーを受け継いでいただきたい」としている。
このうち、スタンドのシートに手を挙げているのが岩手県北上市だ。2016年に開催される岩手国体のメーンスタジアムとなる「北上総合運動公園陸上競技場」のシートとして、再生させたいという。
北上市国体推進課によると、陸上競技場は1997年完成で、シートは劣化し、割れたり、穴が開いたりしている状態。東日本大震災ではグラウンドが一部陥没するなどの被害を受けており、競技に支障をきたす部分から復旧を進めてきたが、シートまでは財政的にも手が回らなかったという。
北上市国体推進課は「国立はスポーツの中心地で、神聖な場所。そのシートが来るというのは名誉なこと。県民の元気も出る」と期待する。取り外しや輸送にかかる費用は譲渡先の負担だが、輸送費は岩手県トラック協会が無償搬送を申し出ているという。また、国立での取り外しは県内や首都圏でボランティアを募りたい考えだ。シートは、北上市以外にも申請があり、JSCが譲渡先を発表するのは5月末。推進課は「吉報を待っている」と話している。
また、文部科学省やJSCによると、芝生や更衣室のロッカーなどについても有効活用できないかどうか、一般向けへの販売も含め、検討されている。
具体的な販売方法は2010年に解体された旧広島市民球場(広島市)を参考にするという。旧広島市民球場では、ホームベースやグラウンドの芝生、ベンチ内の内線電話など1000点以上を売却。インターネットオークションを活用し、広島カープの現役選手らのサイン入り座席も販売された。
文科省は月内にも一般販売の対象物を決める方針で、収益を新国立競技場の建設費に充てることも検討している。一方、東京五輪で使われた聖火台などは保存が決まっている。
≪最後に一目、スタジアムツアー盛況≫
国立競技場の最後の姿を一目見ようと、スタジアムツアーが人気を集めている。解体工事は7月に開始予定。残る見学ツアーは1回だけで、5月22日に実施される。
国立競技場によると、1月の開始当初はまばらだった参加者は次第に増え、ゴールデンウイーク中の5月4日は約7000人を記録、これまでに計2万人を超えた。グラウンド内や聖火台の近くに行けるほか、皇族などが使う貴賓室も見ることができる。
(5月)7日は、平日にもかかわらず約3000人が参加。トラックのスタートラインに立って陸上選手のポーズで記念撮影したり、選手更衣室のロッカーをのぞき込んで染み込んだ歴史の香りを確かめたりする姿が見られた。高校の同級生と2人で来た川崎市の大学教授、青山和正さん(69)は「数十年ぶり。大学1年の時に見た(1964年の)東京オリンピックの陸上競技がよみがえる」とグラウンドを眺め、当時を懐かしんだ。
22日のツアーは午前、午後の2回。問い合わせは、国立競技場事業課(電)03・3403・1151。(SANKEI EXPRESS)