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少女マンガが教えてくれた かわいくなるための魔法

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少女マンガが教えてくれた かわいくなるための魔法

更新

Kyoto_MaGiCで制作された24点の衣服を展示=2014年3月23日(提供写真)  【アートクルーズ】

 ≪「恋!咲く!マーガレット~『マイルノビッチ』と『君に届け』のファッション~」≫

 ほんの数年前までは、マンガのイラスト入りのTシャツを着るのは、ちょっとためらってしまう空気があった。ところが、2000年代より、「UNIQLO」や「BEAMS」を代表格とし、各ブランドがマンガTシャツを手がけたことから、そうした空気はすっかりなくなった。ファッション雑誌でも、たびたびマンガ特集が組まれ、11年には、世界的によく知られているハイブランド「GUCCI」が、マンガ家の荒木飛呂彦とコラボしたことも記憶に新しい。近年、マンガはファッション界における一つのトレンドだと言っても良いだろう。こうした背景には、オタク文化が世界で「クール」なものとして受け入れられ、モードの世界で注目された影響は大きい。「胸部の誇張」や「猫耳」など、マンガ的な記号が、ハイファッションで取り入れられた。

 こうしたモード界の流れが一般にも浸透し、今日のようなブームに至った。しかし、ここまで広がったのは、もともと、マンガのファッションを自らの生活に取り入れる行為が長らく読者の中にあったからこそである。特に少女マンガにおいては、黎明(れいめい)期よりファッションとの関わりが深い。

 Kyoto MaGiC

 京都国際マンガミュージアムでは、少女マンガとファッションとの関わりを探るべく、11年より「Kyoto MaGiC(Kyoto Manga Girls Collectionの略称)」に、京都市と共同で取り組んできた。少女マンガとファッションの関係の歴史をたどりつつ、マンガにインスピレーションを得た衣服を京都のメーカーとともに開発するといったプロジェクトだ。制作した衣類は、毎年、3月にファッションショーで発表。その後、3カ月にわたり展覧会でも展示した。本展は、その3回目として開催しているものである。

 ちなみに、初回は、少女マンガとファッションの関係を探る上で重要な「中原淳一」と「高橋真琴」の画を題材にした。

 戦前の少女雑誌で「抒情画」を描き、読者のファッションリーダー的な役割を担っていた中原は、少女マンガとファッションの前史を語る上で外せない。高橋は、戦後に発展した少女マンガにおいて、ファッションを描くことで少女マンガ独自の表現方法を生み出した作家として重要な一人だ。

 続く2回目では、安野モヨコの「シュガシュガルーン」をテーマにした。安野は、ティーン向けのファッション雑誌が台頭した1990年代において、改めてマンガの中のファッションの魅力を提示した作家だ。読者への影響も大きく、少女マンガとファッションの関係において、エポックメーキングな一人である。

 作品と共通するテーマ

 3回目は、そうした過去2回の経験を踏まえたプロジェクトの集大成的な回である。なぜなら、今回テーマにした作品は、現在進行中で少女たちに影響を与えている人気作品だからだ。

 ひとつは、『マーガレット』に今年の4月まで連載していた「マイルノビッチ」(佐藤ざくり)。そして、もうひとつは、『別冊マーガレット』に連載中の「君に届け」(椎名軽穂)だ。この2作品に共通するテーマは、ずばり「恋」だ。「恋」によって、主人公は、内外面をも成長させていく。この要素が、本プロジェクトのコンセプトにもぴったりだった。「Kyoto MaGiC」には、「少女マンガが教えてくれたかわいくなるための魔法」という意味を込めていたからだ。

 今回、この「恋」の花咲く2作品の3次元化に取り組んだのは、京都の老舗制服メーカーの「村田堂」と、京都に本社を持ち、全国に支店を抱えるヤングカジュアルブランドの「スピンズ」だ。作中の衣服の再現もあるが、物語やキャラクターから、自由にインスピレーションを受けて、オリジナルの衣服を制作した衣服は大きな見どころである。例えば、単純に作中に出てくるファッションに着想を得るだけではなく、作品のモノローグの重なりやセリフなどからインスピレーションを受けたという衣服もある。

 マンガファッションの3次元化の新しいアプローチを垣間見られるはずだ。(京都国際マンガミュージアム研究員、倉持佳代子/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■Kyoto MaGic展覧会「恋!咲く!マーガレット~『マイルノビッチ』と『君に届け』のファッション~」 6月8日(日)まで、京都国際マンガミュージアム(京都市中京区烏丸通御池上ル)で。水曜休館(5月26~29日はメンテナンスのため休館)、大人800円、中高生300円、小学生100円。(電)075・254・7414。http://kyotomm.jp/

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