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【大飯差し止め命令】大飯原発、再稼働認めず 事故後初
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大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた訴訟の判決で、「差し止め認める」などと書かれた垂れ幕を掲げる弁護士ら=2014年5月21日午後、福井地裁前(共同) ≪福井地裁判決「危険性あれば当然」≫
関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)をめぐり、住民らが関電に運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁(樋口英明裁判長)は5月21日、「危険性があれば運転差し止めは当然」として、2基の再稼働を認めない判決を言い渡した。東日本大震災に伴う東京電力福島第1原発事故後、原発の差し止めを認める判決は初めて。
3、4号機は昨年(2013年)9月に定期検査入りで停止。関電は再稼働に向けて原子力規制委員会に審査を申請し、昨年(2013年)7月に施行された新しい規制基準に基づく適合審査が続いている。今回の判決は各原発の審査に影響を与える可能性もある。関電は「速やかに控訴する」としている。
差し止めを命じた判決が確定しない限り、審査に適合すれば再稼働できる。菅義偉(すが・よしひで)官房長官(65)は5月21日の記者会見で、基準に適合すると認められた場合、再稼働を進める政府方針に変わりはないとの認識を示した。
樋口裁判長は「原発は社会的に重要だが、電気を生み出す一手段にすぎず、人格権より劣位にある」と指摘した上で「具体的な危険性があれば、運転が差し止められるのは当然」と述べた。「福島事故では250キロ圏内の住民への避難勧告が検討された」ことを根拠に、原告189人のうち250キロ圏内の166人の請求を認めた。
原発差し止め訴訟で住民側が勝訴したのは、金沢地裁が2006年、北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転停止を命じた判決(名古屋高裁金沢支部で逆転、確定)に次いで2例目。大飯原発3、4号機をめぐっては、大阪高裁が今月(5月)9日、別の住民らが運転差し止めを求めた仮処分の即時抗告審で「裁判所が判断するのは相当でない」として、住民側の申し立てを却下する決定をしていた。
判決を受け、福井県内の自治体の首長や地元住民からは一斉に判決を疑問視する声が上がった。企業関係者からは「再稼働が認められず電力不足になれば、生産活動や雇用にも影響が出る」などの声も聞かれた。
「原子力規制委員会の判断を待たずに司法が結論を出すことに疑問を感じる」。全国原子力発電所所在市町村協議会長の河瀬一治・敦賀市長は談話を発表し、不快感を示した。
2012年夏の大飯3、4号機の再稼働に関し、地元同意した元おおい町長の時岡忍氏(76)は取材に応じ、「一住民として到底受け入れない」と憤る。「規制委による審査で『安全』と判断されれば、あくまでそれに従うまでだ」と持論を展開した。
地元が切望するのは早期再稼働による地元経済への恩恵だ。おおい町商工会の木村喜丈会長(66)は今回の判決に「町内経済への混乱が生じる」と漏らした。(SANKEI EXPRESS)
≪「脱原発ありき」 上級審で理性的な審理を≫
大飯原発3、4号機の再稼働をめぐり、福井地裁は原子力規制委員会が「世界一厳しい」とされる新規制基準に適合するか審査中という時期に運転差し止めを命じた。あまりに拙速で、「脱原発ありき」の判断と言わざるを得ない。
判決は、関西電力の安全対策を「楽観的な見通しのもとに初めて成り立ち得る脆弱(ぜいじゃく)なもの」と指摘。緊急時に原子炉を冷やす機能と放射性物質を閉じ込める機能に欠陥があるとした。ただ、その理由は「冷却システムが崩壊する揺れよりも大きな揺れが起きない確たる根拠がない」などとするだけで具体性に欠ける。
もっとも関電の安全対策が後手に回ったことも事実で、規制委の指摘で基準地震動(想定される最大の揺れ)を2度も見直し、想定が甘かった点は否めない。
判決は「原発の安全性や信頼性は極めて高度なものでなければならない」とした。その指摘は当然だが、そもそも「100%の絶対安全」などあり得ない。
さらに判決は、原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても「国富の流出や喪失というべきでない」と言及。国富を「豊かな国土に国民が根を下ろして生活していること」と定義し、それを取り戻せなくなることが「国富の喪失だ」という現実を軽視した“思想”もにじませた。
上級審では、ゼロリスクに固執せず、脱原発による国力低下という現実のリスクも踏まえた理性的な審理が求められる。(林佳代子/SANKEI EXPRESS)
・大飯原発3、4号機を運転してはならない
・250キロ圏内の住民には原発運転で具体的な危険がある
・安全技術や設備は確たる根拠のない楽観的な見通しに基づき脆弱(ぜいじゃく)
・地震の際、原子炉を冷やす機能と閉じ込める構造に欠陥
・基準地震動を超える地震が来ない根拠はなく、それに満たない地震でも重大事故が生じうる
・福島原発事故は最大の環境汚染。二酸化炭素の排出削減は運転継続の根拠にならない