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「芝居」感じさせないよう細心の注意 映画「ぼくたちの家族」 原田美枝子さんインタビュー

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「芝居」感じさせないよう細心の注意 映画「ぼくたちの家族」 原田美枝子さんインタビュー

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「親のありがたみは自分が親になったときに初めて分かるのよね」と語る、女優の原田美枝子さん=2014年4月22日、東京都江東区(財満朝則撮影)  脳腫瘍で余命を宣告された実母の5年に及ぶ闘病生活をベースに、小説家の早見和真(はやみ・かずまさ、36)が壊れかけた家族の葛藤と再生をつづった「ぼくたちの家族」が、石井裕也(ゆうや)監督(30)の手により同名のタイトルで映画化された。母親を演じた原田美枝子(55)は「作品を見れば、両親からもらった命や、当たり前のように存在する家族の意味をきっと真剣に考えるようになりますよ」と力を込めた。

 物忘れがひどくなり、主婦の玲子(原田)は病院で検査を受けたところ、手の施しようのない脳腫瘍と診断され、医師からは「余命7日」と宣告された。想定外の出来事に夫、克明(長塚京三)と会社員の長男、浩介(妻夫木聡(つまぶき・さとし))は平静を失ったが、普段はちゃらんぽらんな大学生の次男、俊平(池松壮亮(そうすけ))が家族に訪れた危機を冷静に受け止め、解決に向けて思いもよらない力を発揮する。

 脳腫瘍が悪化して不自然な言動を繰り返す人物を演じるにあたり、原田が気をつけたのは「いかにも『俳優が芝居をしているんだな』と観客にわざとらしさを感じさせないよう、細心の注意を払うこと」だった。だが、過剰にならない程度に迫真の演技を見せることは、当然ながら難しい。だから、心構えとしては「『もし自分がこのような症状となってしまったらどうしよう』と観客に考えてもらえるように、加減を加えながら演技に臨みました」と振り返った。

 好奇心とともに歩む

 作中の息子2人は、まるで開き直ったかのように、だんだんと前向きな気持ちで母の病と向き合うようになり、肩の力を抜いて解決の糸口を探っていく。仮に原田が玲子と同じ立場に置かれたら、すでに大人となった3人の子供たちはどんな対応をするのか、まったくイメージできないという。「私は自分が病気になると考えたこともないからでしょうね。でも、そろそろ考えた方がいいのかな。一番上の子供は25歳、一番下がまもなく20歳になります。私が急にいなくなっても、泣くこともないだろうし、何とか生きていけるでしょう」

 普段は家族が一緒に仲良く暮らすことを願ってやまない玲子だが、脳腫瘍の作用で聞くに堪えない本音を次々と吐露して、周囲をハラハラさせるシーンは印象的で、心の中身が持ち主の検閲を経ずに表面化する怖さを存分に思い知らせてくれる。原田にとって心の中身を満たす最大の“成分”は「好奇心」だという。「『次はどんなことが起きるんだろう』『次はどんな人に出会うんだろう』と、前へ前へと視線を定めているうちに、何十年もたってしまったという感じです」。上昇志向も強く、仕事をめぐっては「もっと良くなりたい」「もっと面白い仕事がしたい」「もっと上には何があるんだろう」と常に考えてきたそうだ。

 「私もいろんな若い俳優や女優のお母さん役をやってきたなあ」と、最近つくづく思う。若いときにぱっと芽が出ても、世間の注目が長続きしなかったり、ブレークとはいかずに思ってもみない方向へ路線変更を強いられるケースも目にしてきた。そんな彼らと十数年ぶりに共演するのがまた楽しみの一つだそうだ。「彼らも荒波を乗り越えて頑張ってきたわけです。私には、俳優の先輩として見ている部分と、お母さんの目で見ている部分があって、成長した姿を見ることはとても楽しいんですよ」。5月24日、全国公開。(文:高橋天地(たかくに)/撮影:財満朝則SANKEI EXPRESS

 ■はらだ・みえこ 1958年12月26日、東京都生まれ。74年、映画「恋は緑の風の中」でデビュー。映画での主な出演作は、76年「大地の子守歌」「青春の殺人者」、85年「乱」、86年「火宅の人」、90年「夢」、98年「愛を乞うひと」(日本アカデミー賞最優秀主演女優賞)、2004年「半落ち」、06年「THE有頂天ホテル」など。夫は俳優の石橋凌。

 ※映画紹介写真にアプリ【かざすンAR】をインストールしたスマホをかざすと、関連する動画を視聴できます(本日の内容は6日間有効です<2014年5月28日まで>)。アプリは「App Store」「Google Playストア」からダウンロードできます(無料)。サポートサイトはhttp://sankei.jp/cl/KazasunAR

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