ニュースカテゴリ:EX CONTENTS
科学
山形・加茂水族館リニューアル 夢心地 幻想的に舞うクラゲ
更新
クラゲの展示数が世界一で英ギネスの認定を受け、クラゲ水族館として親しまれている山形県鶴岡市の市立加茂水族館が6月1日の改装オープンを前に、一足早く市民らを招いた内覧会を開いた。目玉の直径5メートルのミズクラゲの大水槽が作りだす幻想的な世界は、大人気になるのが必至だ。
加茂水族館は現在の場所で1964年に開館。大型水族館がオープンする中、来館者が減少し閉館の危機に陥ったが97年にクラゲの展示に力を入れ、人気が復活。オワンクラゲの蛍光タンパクの発見でノーベル化学賞を受賞した下村脩夫妻を招いたり、ギネスの認定を受けるなどして話題になり、一昨年(2012年)は過去最高の27万人が訪れた。
しかし、老朽化や展示が手狭になったことから、同じ敷地内に鉄筋コンクリート3階建て、延べ床面積約4000平方メートル、従来の約2.5倍の展示スペースの新水族館に生まれ変わった。
展示しているクラゲは50種類に及ぶ。ギネス認定当時が30種類のため「おそらく世界一を更新している」(水族館関係者)という。
加茂水族館の人気度は、約30億円の改装費の一部を調達するために、市が発行した住民参加型の公募債「クラゲドリーム債」を2回に分けて公募したところ、先着順の第1次は約20分で売り切れ、抽選となった第2次には募集の6億円に約35億円分の応募があったことでもわかる。オープン前の新水族館の内覧会の招待を購入特典にしていたことが要因の一つという。
≪まるで宇宙「世界唯一」の魅力≫
直径5メートルの大水槽には、約2000匹のミズクラゲがきらめき、宇宙空間に浮かんでいるようだ。劇場のように座って水槽を眺められる。幻想的な世界に時間がたつのを忘れそうだ。
しかし、一時は開館が危ぶまれたという。旧水族館からミズクラゲの引っ越しを行ったのが3月。増やす予定だったが、水質が悪くなりいったん全滅しかけた。水質改善を行い内覧会にこぎ着けた。
山形県酒田市から夫と生後7カ月の長女を抱いて眺めていた阿部唯菜さん(28)は「大迫力。クラゲが星のように浮かんでいて楽しめる。また来たい」と喜んでいた。
同僚と視察に訪れた尾花沢市の旅行会社勤務、長谷川千絵さん(30)は「問い合わせも多く、すでに地元の小学校や保育園などの予約が入っています。見やすく、山形の観光の目玉になりそう」と語った。
来年3月に勇退が決まっている村上龍男館長(74)は「全てはこのオープンのためにあったと思える。全国的にはもっと大きな水槽の水族館はあるが、これほど多くのクラゲの水槽はここしかない。規模ではなく、“世界唯一”で勝負した」と感無量の様子だった。(文:山形支局長 杉浦美香/撮影:写真報道局 松本健吾/SANKEI EXPRESS)