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軽減税率 飲食料品を優先して検討 与党が8案提示

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軽減税率 飲食料品を優先して検討 与党が8案提示

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与党税制協議会であいさつする自民党の野田毅(たけし)税制調査会長(左端)=2014年6月5日午後、衆院第2議員会館(共同)  自民、公明両党の与党税制協議会が6月5日開かれ、生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率制度の論点をまとめた。焦点の対象品目は飲食料品を優先して検討する方針を示し、酒と外食を除く場合などの8案を公表した。納税事務では商品ごとに税率や税額を記載するインボイス(税額票)方式など4つの経理方法を示した。

 与党税協は7月ごろから各案への意見を関係団体から聞き、9月から年末にかけて最終案の取りまとめに入る。

 公明党税制調査会の斉藤鉄夫会長(62)は記者会見で、酒と外食を除く食料品と新聞・出版物を対象にする案は取り下げていないと説明。自民党税制調査会の野田毅会長(72)は、財源を考慮して対象を絞り込む考えを示唆した。

 軽減税率は、2014年度の与党税制改正大綱で「消費税10%時に導入」との方針が明記された。与党は2月から本格検討に入ったが、低所得者対策として導入に前向きな公明と、税収減を懸念する自民の間で議論は大きな進展がなく、今後も難航が予想される。

 今回の論点では、軽減税率の対象は生活必需品で購入頻度が高いものとの考え方から「まずは飲食料品分野を想定して検討する」とした。

 具体的な品目では(1)全ての飲食料品が対象(2)酒類を除く(3)外食も除く(4)菓子類も除く(5)飲料も除く(6)加工食品も除く(生鮮食品が対象)(7)コメ、みそ、しょうゆが対象(8)精米が対象-といった8案を示した。税率1%当たりの税収減は(1)が6600億円で最も大きく、最小は(7)と(8)の200億円と試算されている。

 新聞や出版物を対象にするかどうかは、今後の関係団体への聞き取りなどを通じて検討される見通しだ。

 事業者には「新たに区分経理事務が発生する」とし、現行の請求書を使う方式を基にした2案と、欧州で導入されているインボイス方式の2案を示した。納税事務がより厳密なインボイス方式は「消費税が適正に納税される」と評価した。

 論点では「軽減税率の対象範囲と社会保障の充実・安定との関係は、広く国民的な議論が必要」とも指摘し、対象拡大は社会保障財源に影響を与えるとの懸念も示した。

 ≪商品の売れ行き左右 対象の線引き難航必至≫

 自民、公明両党がまとめた消費税の軽減税率をめぐる論点は、対象品目を線引きする難しさを浮き彫りにした。経理方法の4案も一長一短で、簡単には決まりそうにない。年末の具体策決定に向けた議論のポイントを整理した。

 持ち帰りの牛丼は?

 通常より低い税率を一部の品目に導入するのは、増税で家計が苦しくなる低所得者を中心に負担を和らげるのが目的だ。与党は、飲食料品に導入する想定で8パターンの案を示した。飲食料品から酒類を除く、さらに外食を除くといった具合に区分けしたが、具体的な商品に着目すると判断が難しいケースも多い。

 例えば、店外に持ち出した牛丼やハンバーガーを外食と見なすか。酒とソフトドリンクを含む飲み放題メニューを酒類と扱うかどうか。こうした個別事例の扱いも明確にしておく必要がある。

 与党は関係業界の意見を聞いて品目を絞り込むが、軽減対象となるかどうかは商品の売れ行きを左右しかねないため、調整は難航しそうだ。

 軽減税率の範囲を広げれば、その分税収は減る。財務省の試算では、生鮮食品に限定しても減収額は1800億円に上る。

 公明は昨年(2013年)、酒類や外食を除く飲食料品を対象とする案を示したが、減収分の穴埋め策は明確にしていない。代替財源も確保しないと、消費税の増税分を充てることになっている社会保障にしわ寄せが行きかねない。

 人手不足の中小反発

 軽減税率が導入されると、企業は商品の仕入れや販売時に、通常の税率と低い税率を区分して管理する必要が出てくる。事務負担を抑えつつ、漏れのない公平な課税をどう担保するかが課題だ。

 現行の請求書を使う経理方法を基にした案は、税率ごとの商品の合計額を記載する。このうち、売り手による請求書の発行を任意とする場合と、発行を義務付ける場合の2案がある。いずれも事務負担はあまり増えないとされるが、不正行為防止などの観点から問題も指摘されている。

 一方、欧州で普及しているインボイス(税額票)方式は、商品ごとに税率や税額を書き込むため正確さは増す。こちらも事業者番号などの記載を義務付けるかどうかで2つの案が出ている。ただ、事務負担は重くなるとされ、人手が少ない中小・零細企業の反発も予想される。(SANKEI EXPRESS

 ■軽減税率 生活必需品の消費税率を本来の標準税率より低く抑えて、低所得世帯の家計負担を軽くする制度。英国やドイツ、フランスなどで導入されているが、対象品目の線引きが難しく、税収減や事業者の納税事務が複雑になるといったデメリットがある。与党は昨年末に「消費税10%時に導入」との方針で一致したが、対象品目などの具体的な議論は進んでいなかった。(SANKEI EXPRESS)

 【軽減税率の論点がポイント】

・軽減税率の対象は、生活必需品かつ購入頻度の高さで絞り込み、まずは飲食料品を検討する。酒と外食を除く場合など8案を提示

・事業者には新たに区分経理事務が発生する。商品ごとに税率や税額を記載するインボイス(税額票)方式など4つの経理方法を提示

・軽減税率の対象範囲と社会保障の充実・安定との関係は、国民的な議論が必要。対象範囲が広くなれば、社会保障財源に影響を与える

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