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新成長戦略素案 雇用は3年で集中改革 「第3の矢」 岩盤規制に再び挑む
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産業競争力会議であいさつする安倍晋三(しんぞう)首相(右から3人目)=2014年6月16日午後、首相官邸(酒巻俊介撮影) 政府は6月16日、産業競争力会議を開き、新成長戦略の素案を示した。今後3年間で雇用分野の改革に集中的に取り組むことや、農業協同組合、農業生産法人、農業委員会の3点セットで農業改革に取り組むことなどを柱に、規制に守られた分野の改革を進める。与党との調整を経て27日に閣議決定する。
16日の会議で安倍晋三首相(59)は「この政策案の実行を決断し、やり抜かなければならない」と述べ、新成長戦略を早期に具体化するよう指示した。
素案では政府与党の調整が続いていたため、(6月)10日発表の骨子案には明記しなかった農業や雇用の具体的な施策を盛り込んだ。
雇用分野では、今後3年間を「集中改革期間」と位置づけ、労働時間ではなく成果で働き方を評価し、労働時間規制を適用しない「ホワイトカラー・エグゼンプション」制度の創設を明記した。外国人受け入れでは技能実習制度の滞在期間延長の特例に建設業を加えた。新たな対象業務に介護を加えるなどの抜本的な見直しも行う。
農業分野では全国農業協同組合中央会(JA全中)を頂点とする中央会制度を各地域農協の自由な経営を制約しない新制度へ移行するため、次期通常国会で農協法など関連法案の改正案の提出を目指す。
このほか法人実効税率の「数年で20%台への引き下げ」や女性の活躍推進策、企業統治の強化なども盛り込んだ。また、保険診療と保険外の自由診療を併用する「混合診療」を拡大する「患者申出療養」(仮称)も創設する。
≪「第3の矢」 岩盤規制に再び挑む≫
政府が6月16日提示した新成長戦略の素案は、経済界の要望が強い法人税の実効税率引き下げや既得権益を守ってきた“岩盤規制”の改革に踏み込んだ。企業の競争力強化を後押しするとともに、市場に安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」が「買い」であることを改めて印象づける狙いだ。ただ、施策の具体化はこれからだ。アベノミクスの「第3の矢」は的を射貫くことができるのか-。
安倍首相は16日の産業競争力会議で、「これまで挑戦することもタブー視されてきた壁、何度も挑戦したが乗り越えられなかった壁を突き抜けるような政策を盛り込むことができた」と新成長戦略の出来栄えに胸を張った。
安倍政権は「第1の矢」にあたる大胆な金融緩和と「第2の矢」の機動的な財政政策による需要創出で、当面の景気下支えには一定の成功を収めた。ただ、第3の矢にあたる昨年(2013年)6月にまとめた成長戦略「日本再興戦略」は、市場の厳しい評価にさらされた。昨年(2013年)、安倍首相が講演で成長戦略を発表した際、市場は「踏み込み不足」とみなし、株価は1日で500円超も下落した。
今回の新成長戦略で安倍首相は、政府・与党内の慎重論を押し切り、法人税や岩盤規制の改革にこだわった。1年前の二の舞いを何としても避けたい、との思惑からだ。
新成長戦略では、法人税の実効税率を「20%台」という国際的に遜色のない水準まで下げ、国内外の投資を呼び込む姿勢を鮮明にした。岩盤規制の代表例とされる農業、医療、雇用分野の改革にも着手。農業生産法人への出資規制の緩和や混合診療の拡大は、企業が活躍する余地を広げるほか、ホワイトカラー・エグゼンプションなど新しい労働制度も企業の生産性向上につながる。
また、日本市場の活性化では、社外取締役の活用などで外部の声を反映しやすくする企業統治の強化や、約130兆円の国民の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用を増やす改革を盛り込んだ。
ただ、法人税率の引き下げ幅や、減税に伴う税収の穴を埋める財源をどう捻出するかなどは、年末の税制改正論議に先送りされた。農業改革におけるJA全中の組織見直しや、新たな労働制度の具体策なども関連法案の策定に向けた議論に結論を持ち越した。
改革に反発する業界団体や所管省庁の巻き返しも予想され、現時点で実効性のある改革が着実に実行される保証がないのも事実だ。(本田誠/SANKEI EXPRESS)