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【エコノナビ】自治体消滅を救う「地域おこし協力隊」

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【エコノナビ】自治体消滅を救う「地域おこし協力隊」

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島根県松江市、隠岐諸島(おきしょとう)  安倍晋三首相が6月14日、島根県出雲市を訪れ、全国の都市部から島根県内に移住した「地域おこし協力隊」の若者らと意見交換した。

 地域おこし協力隊とは、都市部の若者らが1年から3年、地方に移り住んで農林漁業の応援、住民の生活支援などに従事し、希望すればその地域への定住も可能という制度で、地域おこしと若者定住の「二兎を追う」政策として総務省が進めているものだ。

 日本でいま危惧されていることは、高齢者が亡くなる一方で、地方に働く場のない若者が都会に出て行き、その結果、人口減・税収減に陥った地方の市町村が消滅するという負のスパイラルである。地域に工場を誘致したり、公共事業を拡大したりという施策は過去のものだ。一筋縄ではいかない地域再生の現場で、若者のアイデアを生かす地域おこし協力隊は意外に健闘しており、安倍首相が協力隊に焦点をあてたというのも時宜を得たことである。

 首相が訪問した島根県は4月1日現在の推計人口がついに70万人を割り込んだ。しかし、市町村ごとにみれば、人口が増えているところも少なくない。特に注目されているのが隠岐(おき)諸島にある海士町(あまちょう)だ。定住希望の若者らのアイデアに真剣に耳を傾け、特産のサザエを使ったレトルトカレーの商品化、養殖岩ガキや塩のブランド化などを進めて、産業振興と働く場を確保していった。その結果、10年で295世帯437人が移住し、町の人口は約2400人になったという。

 総務省によれば、地域おこし協力隊は2009年度の89人から13年度は978人に、派遣自治体は31から318に急増している。地方に若者を投入して、今まで生かしていなかった資源を生かす、そして人口が増えて、地域の存続が可能になる。このサイクルをぜひ全国各地に広げるべきだ。

 その際、問題が起きるとすれば、自治体の側だろう。首相は視察後、「地方創生本部」の新設を表明したが、海土町に学べば、自治体には従来の縦割りの発想を超えて、柔軟に民間や地域住民らと協同できる融通無碍(ゆうづうむげ)なチームの存在が欠かせない。(気仙英郎/SANKEI EXPRESS

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