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エネ分野 日米独企業が事業拡大急ぐ 仏アルストム1兆円買収合戦激化

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エネ分野 日米独企業が事業拡大急ぐ 仏アルストム1兆円買収合戦激化

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 日米独の大企業がフランスの重電大手「アルストム」をターゲットにした激しい買収合戦を展開している。狙いはアルストム社のエネルギー分野。新興国などで急成長が見込まれるほか、先進国でも次世代送電網整備などの需要があり、各社とも事業規模拡大が急務なためだ。

 一方、自国の基幹企業であるアルストムを簡単に手放したくないフランス政府も買収交渉への関与を強めようとしている。総額1兆円を超える超大型買収案件は、多くの思惑が絡み合い複雑な様相を呈している。

 GE参入阻止狙う

 今回の買収合戦の火蓋を切ったのは、世界最大のコングロマリット(複合企業体)といわれる米ゼネラル・エレクトリック(GE)だ。4月末、アルストムが火力用の蒸気タービンや水力発電に強みを持ち、欧州だけでなく中東や南米など新興国にも販路を持つ点などを評価し、総額169億ドル(約1兆7200億円)で買収を提示した。

 この動きに応戦したのが独シーメンス。ただ、資金難などから単独での買収は見送り、製鉄機械の合弁設立などで緊密な関係にあった三菱重工に白羽の矢を立て、両社で1兆円規模の買収提案にこぎ着けた。欧州を拠点とするシーメンスは、何としてもGEの参入を阻止し、牙城を守りたい。一方、三菱重工も今年2月に日立製作所と火力発電システム事業の合弁を設立し、この分野で世界首位に立つ野望がある。両社の思惑が一致した。

 今回、アルストムへの提案で三菱重工は、31億ユーロ(約4280億円)を投じ、3つの合弁企業をつくり、蒸気・原子力タービン事業で40%、送配電機器事業、水力発電事業でそれぞれ20%出資するほか、アルストム本体へも最大10%出資する。

 三菱重の利益疑問視

 しかしこの提案は評価が分かれる。三菱重工が初めて送配電機器事業に絡む点は前向きに受け止められているが、「出資比率からいえば(三菱重工が)主導権を握れず、現場との一体感を出すのに時間がかかり、相乗効果は出しにくいのではないか」(大和証券の田井宏介シニアアナリスト)と危惧する声もある。約5000億円という巨額出資に対し、買収効果を上げられるかが疑問だというわけだ。

 また、GEが買収した場合は、東芝が送配電機器事業に限って買い取りに出ることを検討するなど、他の企業も水面下で動きをみせる。

 さらに事態を複雑にしているのが仏政府の動向。雇用確保を両陣営に求めることで、買収条件のつり上げをもくろんでいるきらいもある。「今世紀最大の案件」(業界関係者)とまでいわれる今回の買収交渉。最終決着までにまだまだ波乱がありそうだ。(那須慎一/SANKEI EXPRESS

 ■アルストム エネルギー事業を主力とするフランスの重電大手。火力発電に使うガスタービンや蒸気タービンなどを製造して欧州や新興国の電力会社などに納入しているほか、送配電の制御システムなども得意とする。鉄道会社向けの車両製造なども手掛けている。経営不振に陥り、フランス政府から資金支援を受けた経緯がある。

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