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【取材最前線】歌舞伎支える巡業と鑑賞教室
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昨年(2013年)4月に新開場した歌舞伎座(東京・銀座)は、この1年間で延べ132万人の観客を集めた。目標入場者数は110万人だったから、こけら落とし興行がいかに盛況だったか伺える。
歌舞伎好きには喜ばしいニュースだが、歌舞伎人気を下支えしているのは、実は地方巡業や入場料が安価な国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」だ。先日、襲名披露興行を全国で続ける市川猿之助さんと中車(=香川照之)さんの巡業先に行き、改めてそう感じた。
公演場所は愛知県知立市の公立ホール「パティオ池鯉鮒」。名古屋から名鉄で知立駅まで30分、駅からタクシーで10分。田畑の間の道を抜け、楽屋口に回ると、上演演目「一本刀土俵入」のお蔦と駒形茂兵衛にふんした猿之助さんと中車さんの写真が大きく荷台に張られた大型トラックが並んでいた。その側に、俳優の楽屋入りを待つ女性の姿が見え、芝居前にワクワクしている様子が伝わってきた。
中部圏はこれまで御園座(名古屋市)で歌舞伎公演があったが、今年3月末に閉館。建て替えて4年後の新開場を目指し、その間は代替ホールでの公演が行われる。拠点がなくなってしまった中、巡業はファンには貴重な機会。この日は平日にもかかわらず、約1000席のチケットは昼夜2回公演とも完売の人気だった。
そんな観客の期待に応えようと、奮闘する俳優やスタッフたち。出番前に稽古する俳優もいて、地方の多目的ホールという制約がある中、歌舞伎座と遜色ない舞台を見せようとする巡業チームと観客の「晴れ」の気持ちが合わさり、独特の高揚感が漂っていた。
6月の国立劇場(東京・隼町)の「鑑賞教室」では、最初は騒がしかった団体の学生が、森鴎外原作の「ぢいさんばあさん」に見入り、老夫婦が37年ぶりに再会する場面で拍手する姿が見られた。巡業や鑑賞教室で、いい舞台に出合えば、いずれ歌舞伎座に来る機会もあるだろう。新開業の歌舞伎座は盛況だったが、観客を年齢別にみると40代以上が86.7%を占め、20~30代は1割という気になる結果も出た。
「一時的なブームに終わらせない」とは、こけら落とし興行中、多くの歌舞伎俳優から聞かれた言葉だ。その危機感が、未来の観客を育てる地道な興行の奮闘につながっている。(飯塚友子/SANKEI EXPRESS)