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科学
認知症のインフラ整備が必要 大和田潔
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日本は超高齢化社会に突入しています。2013年には65歳以上の人口は3000万人をはるかに超えて、総人口1億2500万人に占める割合が25.0%となり、過去最高を更新したことが報告されました。そのうち、200万人を超える方が認知症を患っており、今後350万人ぐらいまで増え続けると予想されています。認知症予備軍の方も含めると、国家的問題であることは明らかです。
問題なのは、1人の認知症の方に対して、数多くの健康な人の活動が制限されてしまうことです。認知症は、ご本人がつらいだけでなく、介護している人々の生活を脅かす恐ろしい側面を持っています。縁側でひなたぼっこをする、記憶力が落ちた老人といったものでは決してありません。
私たちの社会は、個々が独立して身の回りのことを行い、自律的に生きていることを前提にしています。記銘力や判断力が低下して自律性が失われると、予想しないことが起きてきます。遠方で保護された認知症の方をNHKで放映したところ、地元では知らない人がいないぐらい有名な元アナウンサーだったことが判明しました。また、青森の方が京都で保護され、警察官が地元まで送り届けたことも報道されました。徘徊(はいかい)した認知症老人の鉄道事故についても、議論が繰り返されています。
24時間365日、ある人のそばにつききりになるということは付き添いの人の人生活動を制限したり壊したりすることにつながります。社会から少しずつ人材が失われていくことを意味していて、マクロ的に見ると大きな国家財産の損失です。数年あるいは10年近くたって、介護が終わった後には、ご本人たちが高齢になってしまっています。あるいは老老介護の場合は共倒れになることでしょう。
厚生労働省の方がテレビで包括的な地域ケアを充実させ、医療者を巡回させるから大丈夫と言っていたのには唖然(あぜん)としました。安定した状態が変化して、病的状態になったときへの対応しか念頭に置かれていなかったからです。常に目が離せず持続的にケアが必要な人たちをサポートする専門職の人々を育成して、交代で彼らが見続けられるようなインフラシステムの構築が必要です。焦眉の急を有する問題です。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)