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科学
夏の加齢臭、ミドル脂臭 大和田潔
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汗ばみ始める初夏になると、シャツやスーツ、襟元からの漂う加齢臭という言葉を耳にされた方もいらっしゃるかもしれません。資生堂リサーチセンターの土師(は
ぜ)信一郎研究員は、この枯れ草のような独特の匂いはノネナールという物質であることを突き止めました。
ノネナールは、腐敗臭の原因になるアミノ酸やタンパク質ではなく、不飽和アルデヒドのC9H16Oという無機物の分子でした。ノネナールは、自然界に広く存在していて、通常、わたしたちは植物性の食べ物の匂いとして認識しています。古本や植物油が古くなったときの匂いとも形容されることもうなずけます。
ノネナールは、9-ヘキサデセン酸という脂肪酸が分解されて生成されます。男性は30代後半から、女性は閉経後に、皮膚の皮脂腺から9-ヘキサデセン酸の分泌が増加します。このため、その頃から増加する体臭に「加齢臭」という不名誉な名前がつけられることになりました。加齢臭が皮脂腺から分泌される皮脂が原因という点では、ニキビに似ています。
皮膚から分泌される脂質は、食べ物やストレスで変化します。9-ヘキサデセン酸は、ラードやヘッドとよばれる動物性脂肪に含まれるパルミチン酸から生成されます。壮年期になって、体臭が気になるようになってきたら、動物性脂質の摂取を控えてメニューに魚を増やすことにしましょう。耳の後ろや後頭部から多く分泌されるので、入浴時にはその付近をよく洗い、時々ウエットティッシュでぬぐうと良いかもしれません。
ミドル脂臭と呼ばれる、より若い30代男性の世代の匂いも、同じ場所に強く発生します。この体臭は、ノネナールとは異なるジアセチルという物質であることが、化粧品会社マンダムによって明らかにされました。
体臭は、生き物の証しでもあります。気にしすぎるのは良くありません。子供が「お母さんやお父さんの匂いがする」と言って安心するのも、ごくごく自然なことです。人は、無臭無菌で生きていくことはできません。匂いに過敏にならず、不快にならない程度におさえながら、暮らしていくことを心がけることにしましょう。(秋葉原駅クリニック院長 大和田潔/SANKEI EXPRESS)